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「マンションの外壁タイルは本当に補修する必要があるの?」
そのように疑問を感じておられる方は少なくありません。
多くのマンションでは、外壁にタイルが施されています。その理由として、
- 高級感のある外観に仕上がる
- 耐久性が高い
という大きな2つのメリットがある外壁素材であるからです。
しかし、そのような外壁タイルも経年によって劣化が生じ、美観を損なうだけではなく、浮きや剥がれによって落下する危険が生じます。
そのため、定期的にチェックし、破損や欠損が生じているような場合には、大規模修繕の際に修繕しておく必要があるのです。
そこでここでは、マンションのタイル補修工事について、その必要性や劣化症状、タイル補修の方法など、建物のプロであるアパマン修繕プロが徹底解説していきましょう。
マンションのタイル補修工事の必要性
マンションの外壁は、高級感があり、耐久性にも優れている『タイル張り』になっているケースが多くみられます。
コストパフォーマンスが高いために、多くのマンションで採用されています。
ただ、外壁は紫外線や風雨、熱など環境の影響を最も受けやすい箇所であると言え、少しずつ劣化が生じます。
外壁タイルが劣化すると、浮き症状が見られるようになり、そのまま放置していると剥がれ落ちて、大変な事故が起きてしまうリスクがあるのです。
・マンション完成から10年経過で”外壁全面打診検査”が必要
『外壁全面打診検査』とは、マンションの外壁の調査方法のことで、建築基準法施行規則の改正 (2008年4月1日施行) によって、マンション完成から10年が経過し13年までに取り組みが義務付けされているものです。
実際に、外壁タイルに対して打診棒を当てて、音や感触などによって浮きなどの劣化症状を調査していきます。
高所においては、高所作業車やゴンドラなどを活用して、全面調査を行うのです。
また、打診調査だけではなく、赤外線サーモグラフィカメラを活用した赤外線調査や、ドローンを活用した空撮赤外線調査が行われることもあります。
・マンションのタイルは劣化する
マンションの外壁タイルは、一見して丈夫そうであることから、劣化すると言えども、具体的に劣化症状をイメージすることができないかもしれません。
しかし、外壁タイルが劣化すると、
- 浮き
- 剥がれ
- ひび割れや欠損
といった症状が、見られるようになるのです。
外壁タイルに浮きが生じると、そのまま放置したままであれば、いつか剥がれ落ちてしまうことになり、通行人に直撃してしまうリスクがあります。
イメージできないかもしれませんが、実は外壁タイルの落下は、各地で起きていることが知られています。
実際に事故が生じてしまうと、その責任は所有者・占有者であるオーナーや管理会社にありますから、事故が起きないように補修工事をしておかねばならないのです。
また、劣化が生じ、ひび割れや欠損が生じることもあり、事故のリスクはもちろんのこと、美観が損なわれるというデメリットも大きいでしょう。
・劣化症状が生じる原因
ではなぜ、外壁タイルが浮いて、剥がれ落ちてしまうようなことが起きてしまうのでしょうか。
外壁タイルは、下地部分であるコンクリートやモルタルに接着されています。
下地のコンクリートは、水に弱く、水分を吸い込んでしまう性質があり、そのままでは建物の耐震性を損なわせてしまうことになります。
そのため、建物そのものを守るために外壁タイルが貼り付けられているのです。
しかし、経年によって接着力が弱まってしまうと、浮きや剥がれが生じてしまいます。
外壁タイルは耐久性が高い素材ではありますが、気温の変化によって膨張と収縮を繰り返し、ついには接着面を弱くしてしまうのです。
また、大地震や台風などによって、劣化させてしまう要因になることもあります。
そのため、打診棒などの調査によって、実際に浮きが見られる箇所を確認することが大切になるのです。
・劣化による劣化トラブルを防ぐ
外壁タイルの劣化トラブルは、冒頭から何度もお伝えしている通り、浮きや剥がれによって落下してしまうリスクがあるということです。
もし、落下して通行人に直撃でもした場合には、大きな事故となってしまう可能性が十分考えられます。
また、ひび割れや欠損などが生じているような場合には、その箇所から雨水が浸水して、下地のコンクリートを腐食させてしまう可能性もあります。
コンクリートが腐食すると、建物の耐震性が損なわれることになりますので、大地震などの発生で倒壊の危険性や資産価値の低下を招いてしまうことにも繋がってしまうのです。
マンションのタイル補修工事の流れ
大規模修繕工事における外壁タイルの補修工事は、さまざまな種類の修繕工事の中にある、ひとつの工程になります。
まず、足場や現場事務所などの仮設を設置する工事からスタートし、構造部分の劣化を補修する下地処理などが行われたのちに、タイル補修工事が行われることになります。
では、どのような流れで工事が行われるのかお伝えしていきましょう。
・打診調査
外壁タイルの浮きやひび割れなど、ひと目では気づかない劣化症状を掴むために、『外壁打診調査』が行われます。
これは、打診棒を活用して、外壁タイルを1枚1枚叩いて調査する方法で、補修しなければならない外壁タイルを、ピンポイントで見つけることができます。
実際に浮いている外壁タイルを叩くと、問題ない箇所と比較すると乾いた音がします。
調査前には、ある程度の概算の数字を出して見積りを出しますが、それよりもはるかに多い浮きや剥がれを発見することも珍しいことではありません。
打診調査によって、浮いている箇所を特定できたら、テープなどでマーキングしていき、並行して図面に修繕箇所を書き込んでいきます。
見積りよりも修繕箇所が多い場合には、発注者に報告し、相談する中でどのように補修工事を進めていくのか決定していきます。
・下地補修
打診調査によって見つけた浮きやひび割れ箇所に対し、既存の外壁タイルを剥がすなどして、下地であるコンクリートやモルタルを補修しなければなりません。
特に、広範囲にわたって浮きやひび割れが生じているような場合には、破損個所の外壁タイルを剥がしてしまい、張り替えするのが一般的となっています。
というのも、浮きが生じていた箇所の下地は、外壁タイルの接着が悪くなってしまうためです。
新しいタイルをしっかりと定着させるために、モルタルによって下地を整えるようにします。
・タイル補修
外壁タイルの浮き症状には2種類あり、「下地浮き」「陶片浮き」があります。
その症状に応じて、『エポキシ樹脂の注入』もしくは『外壁タイルの張り替え』が行われます。
「下地浮き」とは、外壁タイルを接着しているモルタル自体が、建物本体であるコンクリート構造物から浮いてしまっている状態のことを指しています。
下地浮きの場合には、浮きが発生している箇所に対して『アンカーピンニング工法』と呼ばれる、エポキシ樹脂を注入することによって、浮きを固定させる方法が取られることが多くあります。
エポキシ樹脂とは、いわゆる接着剤の役割を果たすもので、外壁タイルの目地やタイルに穴を開け、そこから流し込んでいくのです。
「陶片浮き」とは、外壁タイルそのものに浮きが見られている状態のことを指しています。
陶片浮きが見られる場合には、エポキシ樹脂の注入が難しく、また接着しづらいために、外壁タイルの張り替えが必要となります。
ただし、張り替えのための外壁タイルを用意しておくことが必要であり、同じ外壁タイルがないことも多いことから、早めに専門業者に発注する必要があります。
・目地補修
エポキシ樹脂の注入や外壁タイルの張り替え作業が終了したら、次にタイル間の目地を補修する作業を行います。
外壁タイルはとても耐久性が高いですが、1枚1枚が硬いために、外壁に貼り付けた際には隙間が出来てしまいます。
そのため、目地をモルタルやシーリングを充填することによって、目地を塞ぐことができ、建物内部への浸水を防ぐことができます。
外壁タイルと同様に、目地にもひび割れや剥がれ、痩せなど劣化症状が見られ、そのまま放置しておくと、そこから雨水が浸水してしまうことになります。
そのため、タイル補修の際には、目地の状態に対しても注意してチェックし、必要に応じて補修しているのです。
マンションのタイル補修工事の補修費用
マンションのタイル補修工事の費用は、見積りによって概算を知ることができます。
ただ、補修費用については、見積り通りではなく実際に補修した内容によって決定されることになります。
そのため、見積りよりも費用が高くなる可能性があります。
また、張り替えのために必要な外壁タイルは、同じものが流通していない場合に、特注になることも珍しいことではありません。
・補修費用は「実数精算方式」が採用される
タイル補修工事の見積りは、一般的に外壁全体の3~5%程度が必要になると考えていることから、その数値から見積り費用を算出することになります。
ただ、実際の補修費用は、「実数精算方式」が採用されます。
「実数清算方式」とは、外壁タイルの打診調査によって浮きやひび割れなど補修が必要な個所を確認し、その補修箇所から費用を清算するという方法です。
概算で3~5%程度であると考えていても、実際には10%前後になることも珍しいことではありません。
そのため、見積りよりも費用が高くなる可能性があるということなのです。
そのようなことから、タイル補修においては「実数清算方式」が採用されるということを理解しておく必要があります。
・補修用の外壁タイルは特注になることも多い
外壁タイルに張り替えが必要になると、張り替えるための新しい外壁タイルを用意しておかねばなりません。
もちろん、もともと張られている外壁タイルと同じもの、もしくは同じデザイン、同じ色のものを用意することは当然です。
しかし、マンションが建てられて10年以上が経過すると、同じ外壁タイルは廃盤になっていることが多く、既存のタイルでの対応ができない可能性もあるのです。
外壁タイルを提供するメーカーに問い合わせすれば、同じものが在庫として残っていたり、類似品のタイルを用意できたりすることもありますが、まったく同じものは存在しないものと考えておいた方がいいでしょう。
そのようなことから、補修用の外壁タイルは特注しなければならないことが多いのですが、色合わせ、風合いを同じものにするため、おおよそ3か月から4か月程度の日数が必要になるのです。
外壁タイルの特注は、剥がした外壁タイルをサンプルとして業者に提出し、見本を作成してもらってから色合わせを行い、問題なければ制作に取り掛かることになります。
そのようなことから、事前に既存タイルの在庫確認など、準備に取り掛かることも重要になります。
・予備費の準備を
マンションのタイル補修工事においては、上記のような流れとなるため、費用については見積り通りに進まないことも少なくありません。
外壁タイルの状態が、思わぬ劣化が進んでいるような場合であれば、想定している数量よりもはるかに増えてしまい、大幅に工事費が追加してしまうことになるのです。
もちろん、大幅に工事費が追加になるような場合には、まず削減案の提案が必要です。
具体的には、アンカーピンニング工法に変更出来る箇所はないか、検討することができます。
例えば、1階部分であれば、仮に外壁タイルが剥がれたとしても事故に至るようなことは考えにくいですし、人の往来の少ない箇所、軽微な劣化、風雨の影響が少ない箇所などでも同様です。
ただ、劣化が想定よりも進行している場合には、やはり安全面を考慮して外壁タイルの交換が必要になることから、あらかじめ予備費を設けておくことも大事でしょう。
まとめ
マンションのタイル補修工事について、必要性や工事の流れ、費用について、詳しくご紹介しました。
外壁タイルの補修工事は、大規模修繕工事の中でも重要な意味を持っているもので、劣化による外壁タイルの剥落を防止することや、耐震性の維持、美観を維持向上させるために行われます。
特に、外壁タイルの剥落のケースは数多く報じられており、もし通行人に当たったとしたら、最悪の場合には大事故に繋がりかねません。
そのため、定期的な検査が義務付けされており、必要に応じて補修や交換が必要なのです。
ただ、タイル補修工事の費用は「実数精算方式」で請求されることになるため、見積りよりも追加費用が必要になることが珍しいことではありません。
また、交換する外壁タイルと同じものが流通していないことが多いことから、製造するために数か月程度の日数も必要となります。
そのようなことから、タイル補修工事は入念な事前準備が必要であり、予備費を設けておくことも必要であると言われます。
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