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紫外線や風雨の影響を受けやすい屋上の防水工事は、大規模修繕工事において必要性の高い工事だと考えられます。
防水方法には『ウレタン防水』『シート防水』『アスファルト防水』『FRP防水』の4種類が存在し、屋上の状態に適した工法が採用されることになります。
そこでここでは、大規模修繕工事における『屋上防水』の必要性や施工方法、耐用年数、費用相場などについて、建物のプロであるアパマン修繕プロが徹底解説していきましょう。
大規模修繕工事における「屋上防水」の必要性
「屋上防水工事って、そもそも必要あるの?」
そう感じておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マンションは鉄筋コンクリートでつくられており、屋上には雨水も排水されるように施されているから、経年劣化なんて考えられないという意見です。
しかし、マンションやビルのように平面の屋上においては、太陽からの紫外線や熱、風雨など、自然の影響をまともに受けてしまう箇所です。
そういう意味においては、マンションやビルにおいて、もっとも過酷な箇所のひとつに屋上が挙げられるのです。
私たちが気づかない間に、防水材や屋根材に悪影響を及ぼし、少しずつ劣化が生じます。
すると、防水機能が失われていくことになり、雨漏りの原因になることや、鉄筋コンクリートへの浸水などによって、建物自体の耐久性まで低下させてしまうことになるのです。
そもそも、マンションであれば、日常的に屋上に上がることはないでしょう。
つまり、基本的には放置されている状態であるのが現状であるため、大規模修繕工事が必要な際には屋上の防水材や屋根材のチェックをしっかり行う必要があります。
劣化や損傷の程度に応じた防水工事が求められているのです。
屋上防水工事の種類とそれぞれの施工方法・耐用年数・費用相場について
- ウレタン防水
- シート防水
- アスファルト防水
- FRP防水
屋上防水工事の種類には、上記の4種類があります。
どのような工事なのか、それぞれの特徴について詳しくご紹介しましょう。
・ウレタン防水
『ウレタン防水』とは、ウレタンと呼ばれる樹脂を用い、防水層を形成する工法のことを言います。
わが国でもっとも採用されてきた防水工事です。
ウレタンは柔軟性があり、樹脂を流し込んで形成していくために、凸凹している複雑な形状の屋上やベランダにも施工可能で、段差などにもしっかりと対応します。
それでいて、継ぎ目がない綺麗な仕上がりになりますから、隙間から雨漏りを起こすような心配をする必要がありません。
また、費用も比較的安価で相場は3,000円~7,500円/㎡程度であることから、現在においても使用シーンは多くみられます。
■ウレタン防水に見られる2種類の施工方法
ウレタン防水では「密着工法」「通気緩衝方法」と呼ばれる2種類の方法が用いられ、劣化状態に応じて、より適切な工法が選択されることになります。
「密着工法」とはウレタン樹脂を下地に直接塗る工法のことで、劣化症状が軽度の場合に適していると考えられています。
早く施工ができるために、工期が短くて済むというメリットがあります。
ただ、下地の影響を受けやすく、下地の膨張や収縮によって防水層にひび割れが生じるような可能性が考えられます
そのため、マンションでの施工においては「通気緩衝方法」が多く採用されています。
下地に通気緩衝シートを貼ることによって、シート内側の水蒸気を逃がすことができ、防水層の膨れを防ぐことができます。
シートには無数の穴が開いているため、下地の影響を受けにくいのです。
劣化が進んで、下地に水分を含んでいるような状況であれば、「通気緩衝方法」が適していると言えます。
■ウレタン防水のメリット・デメリット
■ウレタン防水のメリット
- シームレスな仕上がり
- 複雑な形状でも施工可能
- とても軽い
- 安価に施工できる
■ウレタン防水のデメリット
- 難易度は高い
- 乾燥に時間が掛かる
ウレタン防水のメリット・デメリットをまとめてみました。
ウレタン防水は50年以上も前から採用されている防水工法で、今でも採用されるのは、メリットがたくさんあるからです。
上記でもお伝えしましたが繋ぎ目がないシームレスな仕上がりは、ほかの施工法と比較しても、剥がれや雨漏りなどの心配をするような必要がありません。
凸凹の形状や段差などでも施工することができ、しかも軽量であるために建物に負担をかけることもありません。
費用が安価で相場は3,000円~7,500円/㎡程度であるのも、採用されやすい理由となっています。
ただその反面で、難易度が高い施工法であるとも言われており、職人の腕によって仕上がりが大きく左右されると言われています。
この工法を採用するのであれば、熟練の職人が在籍する業者を選ぶ必要があるでしょう。
また、ウレタン樹脂は乾燥に時間が掛かってしまうために、余裕を持った計画が求められることになります。
・シート防水
『シート防水』とは、名前の通り、ゴムや塩化ビニールといった防水性のあるシートを敷いて、防水層を形成していくという工法を言います。
以前は、工期が短く、しかも安価なゴムシート防水が主流でした。
耐候性と伸縮性に優れているメリットがありますが、デメリットとして防水層が1.2㎜から2.0㎜程度と薄いために衝撃などで破れてしまうことがあるために、現在では塩化ビニール防水が主流となっています。
塩化ビニール防水は、耐用年数が10年から15年程度で、費用相場は2,500円~7,000円程度となっています。
■シート防水にみられる2種類の施工方法
シート工法の施工方法は、接着剤でシートを張り付ける『密着工法』、接着剤を使わず下地から浮かせて固定する『機械的固定工法』の2種類があります。
『密着工法』は、下地に防水シートを接着剤で張り付けていく工法で、特別な施工設備が必要にはならず、しかも工期が短くて済むというメリットがあります。
ただ、直接張り付けているために下地の影響を受けやすく、下地が膨張や収縮によってひび割れが生じた場合には、同じようにシートも避けてしまうことがあります。
そのため、劣化が生じ、水を含んでいるような屋上には適していない工法となります。
『機械的固定工法』は、接着剤を使わないのが特徴で、下地と防水シートの間に絶縁シートをはさみ込み、それらを固定するために専用器具を用いて施工するのが特徴です。
接着剤を活用していないために、効率よく湿気を逃がすことができ、防水層にできやすい膨れを防止できます。
下地の影響をほとんど受けず、しかも既存の防水材を撤去する必要がないことから、短い工期で費用を抑えるといったメリットがあります。
■シート防水のメリット・デメリット
■シート防水のメリット
- 費用を抑えられる
- 工期が短い
■シート防水のデメリット
- 複雑な形状には対応できないケースも
- 防水シートの結合部分が劣化すると雨漏りの原因になることも
シート防水のメリット・デメリットについてまとめてみました。
シート防水は、シートを張り付けていくだけの防水方法であるために、工期が短くて済み、それだけ人件費を抑えることに繋がります。
現在主流となっている塩化ビニールシートであれば、ゴムシートよりも耐久性は高いために、それだけメンテナンス費用を抑えることができるでしょう。
ゴムシート防水の場合、耐用年数は10年から15年程度と考えられていますが、塩化ビニールシートでは10年から20年程度となっています。
費用相場については、ゴムシート防水であれば2,500円~7,000円/㎡程度で、塩化ビニールシートであれば3,500円~7,500円/㎡程度となります。
その反面で、シートを張り付けていく工法であるため、凸凹した複雑な形状には適さないと言えます。
また、耐久性が高い塩化ビニールシートであっても経年劣化は生じます。
塩化ビニールに添加されている可塑剤が劣化すると、弾力性がなくなり、ひび割れなどの劣化が発生することになります。
劣化すると、特に防水シートの結合部分に不具合が生じ、最悪の場合には、隙間ができてしまい浸水してしまうことになってしまいます。
・アスファルト防水
『アスファルト防水』は、従来からさまざまなシーンで活用されている工法で、液状に溶かしたアスファルトを、合成繊維不織布のアスファルトシートと組み合わせて防水層を形成する工法です。
アスファルト防水には下記3種類の工法があります。
- 熱工法
- 常温工法(冷工法)
- トーチ工法
それぞれには特徴が存在し、工期やコストも異なるため、屋上の状態に適した工法が採用されることになります。
耐用年数は一般的に15年から20年程度と考えられており、一般的な相場としては4,500円〜8,000円/㎡となっています。
■アスファルト防水にみられる3種類の施工方法
- 熱工法
- 常温工法(冷工法)
- トーチ工法
『熱工法』は、熱によって溶かしたアスファルトを用い、2~4枚程度のルーフィングシートによって防水層を形成する工法です。
防水工事の中でも歴史のある工法であるため、信頼性が高いといわれますが、アスファルトを溶かす際の熱は200度以上にも及ぶため、ニオイや火災リスクがデメリットだと言われています。
そのため、近年では熱工法が採用されるシーンは減少しています。
『常温工法(冷工法)』は、熱を使わずに防水層を形成できる工法であり、ルーフィングシートにゴムアスファルトをコーティングして、複数枚張り合わせていくものです。
熱工法と比較すると安全性に優れている特徴があり、近年では主流となっている工法です。
『トーチ工法』は、トーチバーナーを用いてアスファルトをあぶって溶かしながら、ルーフィングシートを張り重ねていく工法です。
シートを隙間なく溶着させることができるために、防水効果が高く、費用も安価であるために採用されるシーンの多い工法だと言えるでしょう。
■アスファルト防水のメリット・デメリット
■アスファルト防水のメリット
- 耐用年数が長い
- 信頼性が高い
■アスファルト防水のデメリット
- 工期が長くなる
- コストが高め
- 悪臭の発生
アスファルト防水のメリット・デメリットをまとめてみました。
ルーフィングシートを下地に張り付けて防水層を形成する工法であることから、密閉性に優れており、耐用年数は長いです。
上記でもお伝えした通り、耐用年数は15年から20年程度と考えられており、ほかの防水工法と比較しても長めだと言えます。
また、歴史ある工法であるために、ノウハウが蓄積されており、信頼性が高い特徴を持っています。
ただ、費用は高めであり、一般的な相場としては4,500円〜8,000円/㎡となっています。
また、熱工法を採用する場合には、アスファルトを溶かす際に悪臭が発生し、しかも安全性にも課題があります。
・FRP防水
『FRP防水』は、「繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)」を用いて防水層を形成する工法です。
繊維強化プラスチックとは、ガラス線維を混ぜたプラスチック樹脂のことで、防水層だけではなく近年ではロケットなどにも採用されているもので、防水性能だけではなく、軽さや強さにも大きなメリットがあります。
耐用年数は10年から25年程度と考えられており、一般的な相場は4,000円~8,000円程度となっています。
■FRP防水の施工方法
FRP防水は、床のうえにFRPのシートを敷き詰めて、その上からポリエステル樹脂を塗って硬化させていきます。
さらに保護のためにトップコートと呼ばれる樹脂を重ね塗りし、FRPのシートを紫外線から保護していきます。
トップコートは経年によって劣化しますので、10年前後で塗りなおしすることによって、ひび割れなどを防止することができます。
■FRP防水のメリット・デメリット
■FRP防水のメリット
- 耐久性・耐熱性・耐候性が高い
- 工期が短くて済む
- 軽量
- 衝撃に強い
■FRP防水のデメリット
- コストがやや高め
- 施工できない箇所がある
- 紫外線で劣化する
FRP防水のメリット・デメリットをまとめてみました。
耐久性や耐熱性、耐候性に優れていることから、近年では多くのシーンで採用されている工法であると言えます。
乾燥がとても早いため、工期が短くて済むのも大きなメリットです。
軽量であるにもかかわらず、乾燥するとかなり衝撃に強くなるため、しっかりとした防水層を形成することができます。
その反面で、コストがやや高めであるのがデメリットだと言えるでしょう。
上記でもご紹介した通り、一般的な相場は4,500円〜8,000円/㎡となっています。
場合によってはシート防水の2倍近い費用になってしまうこともあります。
また、伸縮性がかなり低いために、木造や広い箇所など、歪みが生じやすい部位にはひび割れの原因となってしまうため、施工することができません。
また、FRPの上から重ね塗りするトップコートは、紫外線で劣化してしまいますので、10年前後でメンテナンスが必要となっています。
まとめ
大規模修繕工事における『屋上防水』の必要性や施工方法、耐用年数、費用相場について、詳しくご紹介しました。
そもそも屋上防水の必要性を実感されていない方が多いですが、紫外線や風雨の影響を受けやすい屋上では、防水工事の必要性はとても高いといえます。
防水方法には大きく分けて下記の4種類があり、
- ウレタン防水
- シート防水
- アスファルト防水
- FRP防水
屋上の状態に適した工法が採用されています。
それぞれに特徴があり、メリットだけではなくデメリットも存在することから、屋上防水工事は入念に検査をしたのちに適切な工事に取り組むことが大切です。
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