目次
マンションを建築する際には、原則として必要となる『建築確認申請』。
『建築確認申請』とは、建物や地盤が建築基準規定に適合しているか、都道府県や市町村、あるいは確認検査機関から確認を受けるための申請のことを言います。
新築時にはもちろんのこと、大きな改築工事やリノベーション工事などにおいても確認申請をして、『確認申請済証』を受ける必要があるのです。
大きな改築工事やリノベーション工事でも必要になると言うと、『大規模修繕工事でも必要?』と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
結論を申しますと、すべての大規模修繕で必要になる訳ではなく、建築基準法に定義されている工事内容においては確認申請済証を受けておかねばならないのです。
そのため、これから大規模修繕に取り組む方にとっては、必ず理解しておくべき情報です。
そこでここでは、大規模な修繕や改修工事において建築確認申請が必要になるのか、アパマン修繕プロが徹底解説していきましょう。
大規模修繕で建築確認申請は必要?
マンションの大規模修繕は、工事内容によって異なりますが、さまざまな申請や届出が必要になります。
その中で注目されている申請に『建築確認申請』があります。
建築確認申請が必要であるにもかかわらずに申請を怠った場合には、管理組合やマンションオーナーが処罰を受けることになりますので十分注意が必要です。
それでは、建築確認申請とはどのようなものなのか、詳しくお伝えしていきましょう。
・建築確認申請とは
『建築確認申請』とは、マンションの新築時や改修などの際に、建築基準に適合している工事計画であるのか、着工する前に地方公共団体の建築主事や、民間の確認検査機関に申請し、建築確認検査済証の交付を受けるためのものです。
建築確認申請は建築基準法によって定められている申請であり、確認申請が必要な建築や工事内容が定義されています。
具体的には、建築基準法 第6条の『建築物の建築等に関する申請及び確認』に、具体的な工事内容について定められています。
第6条には、基準を満たしている建築物の建築、あるいは建築物に対する大規模の修繕、もしくは大規模の模様替えなどについて明確に記載されています。
つまり、この第6条をみれば大規模修繕における計画が、建築基準関係規定に適合しているのか確認できます。
確認申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないとしている内容が理解できます。
・確認申請が必要になる建築物は?
建築確認申請の根拠として、建築基準法第6条をお伝えしましたが、第6条の1号から4号において、建築確認申請が必要になる具体的な建築物について定められています。
第1号
特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるもの
第2号
木造の建築物で3階以上、または延べ面積が500㎡、高さが13mもしくは軒の高さが9mを超えるもの
第3号
木造以外の建築物で2階以上、または延べ面積が200㎡を超えるもの
第4号
第1号~第3号に掲げる建築物を除き、都市計画区域もしくは準都市計画区域、景観法などで指定する区域内における建築物
第1号の『特殊建築物』とは、学校や病院、ホテル、百貨店、映画館などのことを指しており、200㎡を超える特殊建築物であれば、確認申請が必要になります。
ちなみに特殊建築物にマンションが該当するのかについては、特殊建築物の解説として建築基準法第2条2項に次のように記載されています。
『特殊建築物 学校(専修学校および各種学校を含む)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。』
この中に、『共同住宅』と記載されていることから、床面積が200㎡以上であれば、建築確認申請が必要なマンションに該当することになります。
逆に言えば、200㎡以下の小規模なマンションやアパートの場合であれば、大規模修繕工事において建築確認申請は必要ありません。
ちなみに、第1号については2018年に改正されており、従来の100㎡から200㎡となっていますので注意が必要です。
・すべての大規模修繕に確認申請は必要?
建築基準法第6条において、確認申請が必要になるケースについて大規模修繕も含めて、定められています。
ただし、すべての大規模修繕に必要になる訳ではなく、新築によるものと比較すると条件が異なっています。
上記でご説明した、第6条の第1号から第4号のうち、大規模修繕については第1号から第3号までが対象となっています。
さらに、『大規模の修繕』もしくは『大規模の模様替え』と定められているように、『大規模』が基準となっており、小規模であれば含まれないことが分かります。
どこからが大規模に該当するのかという基準においては、建築基準法第2条の14項・15項に次のように定められています。
14項 大規模の修繕
『建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう』
15項 大規模の模様替え
『建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替えをいう』
ここで、ポイントとなるのが、『修繕・模様替え』『主要構造部』『過半』などといった意味合いになるでしょう。
次の章において、大規模修繕工事で必要になる確認申請を明らかにしていきます。
建築確認申請が必要になる大規模修繕の工事内容
上記でもお伝えしましたが、建築基準法に定められている通り、200㎡を超えるマンションの場合、大規模修繕工事において建築確認申請が必要になるケースがあります。
建築基準法第6条に定められている建築物、さらには同第2条に定められている修繕や模様替えによるものです。
では、どのような工事内容が、実際に建築確認申請が必要となる大規模修繕工事なのか、詳しくご紹介しましょう。
・建築物の主要構造部
建築基準法第2条の14項・15項共に、大規模の修繕・模様替えについては『建築物の主要構造部』が対象であると定められています。
『主要構造部』とは、壁や屋根、柱、床、階段などといったものを指しており、防火や安全、衛生といった観点から建物を見た重要な部位を示していることが分かります。
主要構造部については、建築基準法第2条5項において次のように用語の説明が定められています。
『主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。』
このようにみると、主要構造部の大規模修繕は対象となり、それ以外の部位の修繕に対しては、大規模修繕であっても対象とならないことが分かります。
ただし、屋外階段については主要構造部として認められていませんが、避難階段については建物の安全上において重要な部分であるため、主要構造部として考えられることが多いです。
そのようなことから、法令だけを見て主要構造部を判断するのではなく、地方自治体や建築主事に確認することが大事でしょう。
・『大規模』の修繕・模様替え
建築基準法には、『大規模』の修繕・模様替えが建築確認申請の対象として定められています。
つまり、通常の修繕や模様替えでは対象にはならないことを意味しており、外壁や屋根塗装といった修繕工事だけでは対象とならないのです。
具体的には、建築基準法第2条14項15項に定められている、『建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕・模様替えをいう』という言葉を満たしている必要があります。
主要構造部について上記でご説明した通りで、その1種類以上について施工する過半の修繕工事、リノベーション工事などが該当することになります。
法令の中に『過半』という文言があり、半分以上が対象になっていることが分かります。
ただこれが、修繕・模様替え工事の過半なのか、あるいは建物全体の過半を指しているのかについては、地方自治体によって異なった解釈があるため注意が必要です。
・修繕と模様替えの違い
建築基準法において建築確認申請が必要なケースの一つとして、大規模の修繕・模様替えが挙げられていますが、修繕と模様替えの違いについてもご紹介しておきましょう。
『修繕』とは、経年劣化した建築物の部分を、既存のものとおおむね同じ位置に、おおむね同じ材料、形状、寸法のものを用いて原状回復を図ることを指しています。
『模様替え』とはいわゆるリノベーション工事のことで、建築物の構造・規模・機能の同一性を損なわない範囲で改造することをいいます。
一般的な改修工事などのように原状回復を目的としているものではなく、あくまで性能の向上を図る工事のことを模様替えと呼んでいるのです。
建築確認申請で必要となる書類や事前協議、既存不適格について
建築確認申請では、さまざまな書類が必要になります。
そのため、まずは事前協議を経て、申請するケースが多くなっています。
また、建築基準法は年々改正を重ねられていることから、申請時に建築基準を満たしていない『既存不適格』であるケースが多くなっています。
ここでは、申請で必要になる書類や事前協議、既存不適格への対応についてご紹介します。
・建築確認申請で必要となる書類や事前協議
- 確認申請書
- 消防用設備等または特殊消防用設備等設置計画書
- 委任状
- 意匠関係図書
- 設備関係図書
- 構造関係図書
- 建築工事届
- 建築計画概要書
- 適合判定通知書
- 判定申請図書
建築確認申請にはさまざまな書類を準備しなければならず、提出方法については自治体や市町村によっても異なります。
そのため、おおむねどの自治体・市町村においても事前調査や事前相談、事前協議を経て確認申請を行う流れとなります。
事前協議が済んでいなければ確認申請ができませんので、まずは各自治体・市町村の窓口に問い合わせをしてみてください。
また、申請には手数料が必要となり、各自治体によって費用は異なります。
建物の床面積ごとに手数料が定められていますので、事前協議の際にでも確認しておくと良いでしょう。
・確認申請における既存不適格について
既存のマンションにおいては、現在の建築基準関係規定に適合していない『既存不適格』に該当するケースが少なくありません。
建築当時は適法だったものの、その後に法令が改正されたことによって不適合の状態である建物のことを言い、そのような建築物のことを『既存不適格建築物』と呼んでいます。
既存不適格のマンションにおいては、現行の建築基準法に適合させなければなりませんが、工事内容によっては大きな負担を避けられない状況となってしまいます。
ただし、建築基準法は少しずつ改正されていますので、経年によって規定に適合しないことは当然のことです。
そのため既存不適格の建物に対して、さまざまな緩和措置が取られていますが、どのような条件においても適用される訳ではありません。
ただ、ほとんどのケースにおいて既存不適格であっても問題はありません。
緩和措置が受けられる場合には、建築当時の規制や規定を満たしていれば問題ないと判断されることになります。
まずは、マンションが既存不適格に該当するのかどうか確認し、緩和措置を受けられるのか、緩和できずに改修が必要になるのか調査が必要になります。
もし、既存不適格に該当する場合には、確認申請の事前協議の際に相談しておくといいでしょう。
まとめ
マンションの大規模修繕工事での建築確認申請について、建築基準法上の定義や大規模修繕での申請の有無、必要書類などについて詳しくお伝えしました。
建築確認申請とは、マンションの新築や大規模の改修、リノベーション工事などで必要になる申請で、建物の規模や改修内容によって申請の有無が定められています。
そのため、既存のマンションの大規模修繕において対象とならないことや、工事内容によっても不要となるケースも多いのです。
ただ、必要なケースにおいて建築確認済証を受けていない場合においては、処罰の対象となっているために注意が必要です。
建築基準法は年々改正されており、既存のマンションが現行規定と不適合なケースも少なくありません。
そのため、大規模修繕工事に取り組む際には、まず既存不適格かどうか調査を行い、自治体の事前協議において相談することが大切です。
このような複雑な法律が規定されていることから、これから大規模修繕工事を検討しているのであれば、経験豊富で信用できる施工業者を選ぶことが重要です。
マンションの大規模修繕工事のことなら、神奈川県川崎市の地元に20年以上密着し、4,000件超の豊富な実績を持っている大規模修繕専門店『アパマン修繕プロ』にご相談ください。
まずは、『大規模修繕・マンション修繕&防水工事専門店ショールーム』にお気軽にお越しください。