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マンションやアパートの大規模修繕工事は、一般的には『12年ごと』と言われることが多いです。
これは、国土交通省から公表されている大規模修繕のガイドラインに、その目安として12年と記載されていたためです。
ただ、このガイドラインはすでに改正されており、修繕周期の目安についても修繕箇所によって『12年~15年』などといった、幅を持たせた表現に変化しています。
では、いったいどのくらいの周期で修繕に取り組めばいいのでしょうか。
ここでは、国土交通省が公表しているマンション修繕工事に関する実態調査のデータをもとにして、周期の考え方についてアパマン修繕プロが徹底解説していきましょう。
参考:国土交通省『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査』『長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント』
大規模修繕工事の周期は12年?
『大規模修繕工事の周期』を聞いてみたり調べたりしてみると、『12年』という答えが返ってくることが多いのではないでしょうか。
専門業者もそのように答えていることが多いですし、インターネットで専門業者のサイトを調べてみても、そのように記載されているものを見かけます。
冒頭にもお伝えした通り、これは国土交通省ガイドラインで記載されていた大規模修繕工事の目安が12年であるために、当然の答えだと思います。
ただ、現状では15年や18年で取り組まれているケースがあり、今後は長周期化する可能性があるように感じます。
・大規模修繕工事の周期の基本的な考え方
大規模修繕は、マンションにおいて快適な暮らしができるような居住空間を確保し、資産価値を維持する目的で行われます。
そのため、マンションの形状や仕様、立地条件、あるいは劣化症状などにも応じた内容で、修繕積立金などの状況も踏まえながら計画する必要があります。
さらには、居住者の要望にも応える必要がありますし、自然災害などに対応するための耐震性能の維持向上の観点からも検討しなければなりません。
また、省エネ性能が低いマンションであれば向上させるための改修工事は有効性が高いですし、エレベーターの定期的な点検も必要になります。
そのような大きな視野によって、大規模修繕の周期を決定する必要があり、長期修繕計画を立てていく重要性があります。
・大規模修繕工事の周期は12年?
繰り返しになりますが、大規模修繕の周期は一般的に12年と言われることが多く、多くのマンションではその前後の周期で取り組まれるケースが多くなっています。
国土交通省が公表しているガイドラインに、大規模修繕の周期の目安として12年と記載されていたのがその理由です。
大規模修繕の内容を国土交通省のデータで確認してみると、その割合に多いものに『屋上防水』『床防水』『外壁塗装』があります。
防水工事にしても、外壁塗装にしても周期の目安として、12年前後と言われることが一般的であることから、やはり大規模修繕が12年が目安になるのには妥当性があると言えるでしょう。
ただ、防水工事だけみてもアスファルト防水であれば耐用年数が長く15年以上と言われていますし、外壁塗装に用いられる無機塗料であれば20年以上と公表されているものも存在します。
そのようなことから、国土交通省としても一律に12年を目安にするのではなく、幅を持たせて修繕周期を計画していくことが示されているのです。
例えば、屋上防水やバルコニー床防水、外壁塗装においては、従来の目安12年から、12年~15年といったものに変更されています。
そのため、今後は12年周期を目安にするのではなく、長周期化していくのではないかと考えられるのです。
・大規模修繕工事の周期の目安や考え方
- 大規模修繕工事の修繕周期の目安について、工事事例等を踏まえ一定の幅を持たせた記載とする。※ 現行のガイドラインの参考例:外壁の塗装塗替え:12年 → 12~15年、空調・換気設備の取換:15年 → 13~17年など
国土交通省の公表しているガイドラインは、現在では上記で示した通りに改訂されており、例えば外壁塗装の場合であれば12年から15年といった幅を持たせた記載になっています。
大規模修繕の工事内容の中で特に取り組まれる割合が多い『屋上防水』『床防水』『外壁塗装』『外壁タイル』『シーリング工事』『鉄部等塗装』については、次のように示されています。
- 屋根防水(屋上防水):補修・修繕(12年~15年)
- 屋根防水(傾斜屋根):補修・修繕(12年~15年)
- 床防水(バルコニー床防水):修繕(12年~15年)
- 床防水(開放廊下・階段等床防水):修繕(12年~15年)
- 外壁塗装等(外壁塗装):塗替(12年~15年)
- 外壁塗装等(タイル帳補修):補修(12年~15年)
- 外壁塗装等(シーリング):打替(12年~15年)
- 鉄部塗装:塗替(5年~7年)
また、長期修繕計画の考え方として、『大規模修繕工事2回を含む30年以上』という内容に改訂されています。
そのようなことから、今まで示されてきた『12年』に捉われることなく、耐用年数などを考慮しながら柔軟に対応することが求められているのです。
一般的なマンションにみられる大規模修繕工事の周期や工事内容
ここで、国土交通省が公表している、『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査』の内容から、一般的な周期や工事内容についてお伝えしていきましょう。
このデータは令和3年7月~10月に大規模修繕に取り組まれたマンションに対する調査によって集積されたものとなっています。
ちなみに、上記でご紹介した国土交通省ガイドラインについては、令和3年9月に改訂され、令和4年4月からスタートされていますので、今後の数値は上記で説明した通り、柔軟な対応に変化することが考えられます。
そのため、あくまで直近データとして目安になるものとして提示させていただきます。
・大規模修繕工事の回数と築年数
工事回数 | 築年数 | 中央値 |
1回目 | 築15年以下(51.6%)
築15年~20年(32.6%) |
15年 |
2回目 | 築26年~30年(47.2%)
築30年~35年(18.4%) |
28年 |
3回目 | 築41年以上(46.5%)
築35年~40年(25.5%) |
40年 |
上記のデータは、大規模修繕の1回目~3回目に行われた築年数で多い割合のもの上位2位までと、中央値の築年数を記したものです。
新築から1回目の大規模修繕でもっとも多い周期は『築15年以下』で、割合は51.6%と半数強が取り組まれている状況が分かります。
その次に多い『築15年~20年』が32.6%となっており、この築年数で8割を超える結果となっているのが分かります。
中央値は15年と示されていることから、この築年数がひとつの目安になるのではないでしょうか。
2回目の大規模修繕においては、もっとも多い割合の築年数が『築26年~30年』となっており、半数弱の47.2%。
3回目については『築41年以上』で46.5%となっていますが、中央値が40年と言うことからしても、おおむね45年くらいまでには取り組んでいることが推測できます。
中央値の推移を回数別に見てみると、『15年→28年→40年』となっており、周期としては『15年→13年→12年』であることからしても、回数を重ねるごとに早めに取り組んでいる様子が伺えます。
これはマンションの劣化状況なども踏まえているのだろうと考えられます。
・データで見る大規模修繕の工事内容
工事回数 | 工事内容 |
1回目 | 外壁塗装(21.6%)
床防水(20.9%) 外壁タイル(18.5%) シーリング工事(14.5%) 屋根防水(12.1%) |
2回目 | 外壁塗装(23.4%)
床防水(17.9%) 屋根防水(17.2%) シーリング工事(11.4%) 外壁タイル(10.5%) |
3回目 | 外壁塗装(28.8%)
床防水(15.7%) 建具・金物等(15.3%) 屋根防水(12.9%) シーリング工事(9.1%) |
このデータは、マンション大規模修繕の回数別の工事金額の割合になります。
3回を通してみてみると、いずれにおいても『外壁塗装』がもっとも高い割合を示しており、さらに回数を増すごとに、その割合も高くなっていることが分かります。
外壁塗装に次いで割合の高いものが『床防水』となっており、こちらにおいては回数ごとに少しずつ割合が下っています。
『屋根防水』については3回目において割合が下っているものの、工事費用の中では多くの割合を占めるものとなっています。
このように見てみると、『外壁塗装』『床防水』『屋根防水』が工事費用の多くを占めていることが分かります。
それらを合計してみると、
1回目:54.6%
2回目:58.5%
3回目:57.4%
と高い比率になっていることが分かります。
そのため、大規模修繕においては欠かせない工事であると言っても良いでしょう。
また、3回の工事を通してみて、『建具・金物等』の割合の変化がかなり大きいことが分かります。
1回目:1.9%
2回目:7.2%
3回目:15.3%
と推移しています。
『建具・金物等』については、国土交通省ガイドラインには、次のような修繕目安が示されています。
建具・金物等 | 修繕の目安 | 工事内容 |
建具関係 | 12年~15年 | 点検・調整 |
34年~38年 | 取り換え | |
手すり | 34年~38年 | 取り換え |
屋外鉄骨階段 | 12年~15年 | 補修 |
34年~38年 | 取り換え | |
金物類(集合郵便受等) | 24年~28年 | 取り換え |
金物類(メーターボックス扉等) | 34年~38年 | 取り換え |
こちらの目安については2022年4月からスタートされているものですが、補修などと共に、取り換えの目安について記されています。
例えば、集合郵便受けであれば24年~28年で取り換えの目安となり、その他の建具や手すり、屋外鉄骨階段などは34年から38年で取り換えとなります。
大規模修繕の回数で言いますと、2回目や3回目にあたることから、今後も『建具・金物等』については同じような推移になるのではないかと考えられます。
・国土交通省ガイドライン改訂後の周期はどうなる?
上記でもお伝えした通り、国土交通省ガイドラインは改訂され、長期修繕計画の計画期間は30年以上、かつ大規模修繕工事が2回含まれるものとなっています。
これはかつての新築時のマンションと同じ内容となっています。
もともと既存マンションにおいては長期修繕計画期間を『25年以上』としていたため、工事の施工技術や素材の性能が高まっていることが評価されていることが分かります。
上記で示した修繕周期の例についても、あくまで目安にすぎませんから、これからはより柔軟に取り組むマンションが増えてくるように感じます。
国土交通省からは、上記で示したような修繕だけではなく、省エネ性能を向上させる改修工事の有効性について示し、外壁や屋上、窓などの断熱回収工事などについても推奨しています。
居住者からの満足度を高め、資産価値を維持向上させるためにも、経験豊富な専門業者と相談し、計画を立てていくと良いでしょう。
まとめ
マンションの大規模修繕工事の周期について、国土交通省が公表している実態調査のデータやガイドラインの改訂内容などを踏まえ、詳しくご紹介しました。
大規模修繕の周期の考え方について、ご理解できたのではないかと感じます。
かつては『12年』と言われていた周期ですが、修繕箇所の劣化状況なども踏まえて柔軟に取り組むことができるように、国土交通省からも示されています。
大規模修繕工事の費用で割合が高いものには『外壁塗装』『床防水』『屋根防水』があり、これらで工事費用の6割近くにまで達します。
そのようなことから、これらの修繕を中心に大規模修繕の周期が決められるマンションも多いのではないでしょうか。
国土交通省ガイドラインにおいては、いずれも12年から15年を修繕周期の目安としていますが、活用する素材や工事内容などから長期修繕計画を立案することが大切です。
そのため、長期修繕計画については、大規模修繕の経験が豊富な専門業者と相談し、どのように取り組んでいけばいいのか決定すると良いでしょう。
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