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マンションの大規模修繕において『鉄部塗装』に取り組まれるケースが多くなっています。
『鉄部塗装』とは、鉄骨の外階段や非常階段の扉、玄関扉、エレベーターの扉・枠、手すりなど、劣化が生じている箇所に対して塗装工事を行うことを指しています。
塗装は経年によって劣化して色褪せや剥がれなどが生じ、そのまま放置していると錆びてしまい、美観はもちろん、耐久性にまで影響を及ぼしてしまいます。
そこでここでは、マンションの鉄部塗装について、必要性やタイミング、劣化症状、作業工程、費用などを踏まえ、アパマン修繕プロが徹底解説していきましょう。
マンションの鉄部塗装の概要
『マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省)』によりますと、鉄部塗装に取り組まれる割合は、1回目の大規模修繕では6.6%、2回目では7.2%、3回目では8.8%となっており、回数を重ねるごとに増えていることが分かります。
ただ、マンションの鉄部塗装の場合、足場を設置せずに施工できる箇所が多いことから、大規模修繕時ではなく単独で修繕されるケースも多くなっています。
・マンションの鉄部塗装とは?
マンションの鉄部塗装は、共用部分にある鉄製の箇所に対する修繕方法になります。
該当する箇所として、次のようなものが挙げられます。
- 鉄骨の外階段
- 非常階段の扉
- 玄関扉
- エレベーターの扉・枠
- 手すり
- メーターボックス
- 駐輪場・駐車場
- 給水管
など、あらゆる箇所に鉄を素材としてつくられているのが分かります。
それらを総称して鉄部と呼び、錆びないように塗装が施されています。
・マンションの鉄部塗装の必要性
上記でお伝えした鉄部については、新築時にはしっかりと塗装が施されており、錆びないように、また安全に活用できるように配慮されています。
そのようなことから、マンションの鉄部塗装は、
- 経年劣化による塗膜の剥がれや錆びを防止する
- 美観を向上させる
- 鉄部の耐久性を高める
などといった目的のために必要不可欠なものなのです。
塗装で形成した塗膜は経年によって劣化し、色褪せや汚れをはじめ、塗膜の浮き、剥がれ、ひび割れなどが生じるようになります。
その箇所から雨水や湿気が侵入するようになり、錆びが発生するのです。
錆びが発生すると、当然ながら美観を損なうようになりますので、マンションの入居者の満足度をはじめ、入居率、資産価値などにも影響を及ぼすようになります。
また、そのまま放置し続けていると、錆びの箇所に穴が開いてしまうことになり、耐久性が著しく低下してしまいます。
例えば、外階段に錆びが生じ、穴が開いているような場合には、耐久性の低下によって階段が抜けてしまうようなことがあるため、大事故に繋がってしまう可能性があります。
そうなると、階段自体を交換しなければならないことになりますので、早めに状態に気づいて、塗装に取り組んでおくことが重要なのです。
・マンションの鉄部塗装のタイミング
マンションの鉄部塗装は、鉄部の塗膜に劣化が生じ始めた頃に検討し、専門業者に相談しながら進めていくことが大切です。
大規模修繕工事において取り組まれるケースも多いのですが、大規模修繕はおおむね10年から15年程度の頻度で行われるために注意が必要です。
鉄部の塗膜の劣化は、おおむね3年~5年前後で生じると言われていますので、3年が経過する頃には相談し始め、適切な時期に塗装するといいでしょう。
特に、塗膜の劣化はマンションの立地状態によって進行具合は異なり、紫外線や風雨の影響を受けやすい箇所などでは、早く劣化症状がみられることがあります。
そのため、劣化症状が生じていないか、普段から意識しておくことが大切です。
劣化症状については詳しく次の症状で解説いたしますが、色褪せが目立ってくることや、手に触れると白い粉が付くような状況になれば、塗装が必要であると認識しておく必要があります。
マンションの鉄部塗装にみられる劣化症状
マンションの鉄部の塗膜に劣化症状が現れていれば、早めに塗装に取り組んでおくことが重要です。
上記もお伝えした通り、大規模修繕工事と鉄部塗装のタイミングと合わないこともありますので、劣化症状がみられた場合には小規模修繕として取り組むようにするといいでしょう。
・艶がなくなる・色褪せ
鉄部塗装の劣化症状で、もっともみられる症状と言えば、艶がなくなることや色褪せがみられることでしょう。
塗料の劣化症状の中で初期段階の症状であり、前回の塗装からおおむね3年程度が経過する頃にはみられるようになります。
これらの症状によって、すぐに鉄部が錆びてしまうようなことはありませんが、そろそろ塗り替えの時期が来たと認識しておくタイミングだと言えます。
専門業者に相談しながら、ほかの修繕工事の計画も踏まえ、塗装時期を検討していくといいでしょう。
・チョーキング現象
チョーキング現象とは、塗膜の手を触れると白い粉が付く劣化症状で、初期から中期の劣化症状の中でも気づきやすい状態であると言えます。
白い粉の原因は塗料の成分の分離であり、紫外線などの影響で劣化が進む中で成分が分離して、白い成分だけが浮き上がっているのです。
そのため、塗料の持っている防汚性や防水性などの機能がかなり低下している状態であり、そのまま放置していると、中度から重度の症状に移行していきます。
チョーキング現象はおおむね3年から5年程度でみられる症状であるため、速やかに塗り替え時期を検討しなければならない段階であると言えます。
・ひび割れ・剥がれ
塗膜の劣化が生じている段階で放置していると、塗膜にひび割れや剥がれなどといった症状が現れるようになります。
この段階までいくと、すでに塗膜としての機能は失っており、おおむね3年から7年程度でみられるために、速やかに塗り替えしなければ、錆びが生じることになってしまいます。
ひび割れや剥がれの箇所から雨水や湿気が侵入してしまうためで、しかも錆びはとても早く進行するため注意しなければなりません。
そのため、塗膜にひび割れや剥がれなどの症状が現れる前に、塗り替えをしておくことが必要です。
・錆び
塗膜の機能が完全に失われてしまうと、下地である鉄にそのまま影響を受けることになり、錆びが生じてしまいます。
錆びが生じている箇所を発見した場合、その箇所が小さな間に専門業者に相談し、塗装に取り組んでおくことが賢明です。
というのも、上記でお伝えしている通り、その時期になると塗膜の機能は完全に失われており、いずれ錆びがあちこちで発生することになるからです。
錆びの状態が軽度の場合には、錆びをサンドペーパーで落とし、錆び止めをしたうえで塗料を塗り重ねていくことになります。
ただ、錆びが進行し、穴が開いてしまうことや、かなり腐食が進んでいる状態になってしまうと、鉄部を交換しなければならないことになりますから、速やかに専門業者に相談するようにしましょう。
マンションの鉄部塗装の作業工程
マンションの鉄部塗装は、塗料を塗布して完了というものではなく、内部から腐食が進んでいかないように錆びを落とし、さらに塗料を三度塗り重ねて、強固な塗膜を形成していきます。
どのような作業工程で工事が行われるのか、詳しくご紹介しましょう。
・ケレン
鉄部を塗装する前に、まず『ケレン』と呼ばれる作業が行われます。
ケレンとは、サンドペーパーや専用の電気工具などを用い、鉄部に付着している古い塗膜や錆びを落とすための作業工程になります。
古い塗膜や錆びが付着している状態で塗装したとしても、塗料がしっかりと下地に密着せずに、すぐに不具合を起こしてしまうことになります。
そのため、劣化症状に応じて、サンドペーパーをかけたり、電動サンダーなどのケレン専用工具を用いたりして、丁寧に下地処理をしていくのです。
また、ケレンによって鉄部が綺麗になれば、『目粗し』と呼ばれる、鉄部の表面を傷つける作業が行われます。
これは、鉄部をケレンで綺麗に磨き上げると、表面がツルツルになり、塗料の密着性が悪くなってしまうため、わざと傷をつけてザラザラにして、塗料をしっかりと密着させて剥がれないようにするのです。
・養生
ケレン作業が完了すると、次にマスキングテープやビニールシートなどを活用して、塗装する箇所以外に塗料が付着してしまわないように養生を行います。
例えば、屋外にある階段に塗装する場合には、設置されている外壁や地面などに塗料が飛び散ってしまう可能性があります。
自転車置き場や駐車場などであれば、自転車や車両のうえからビニールシートを被せるようなこともあります。
・下塗り
ケレン作業によって下地処理が完了し養生が済めば、いよいよ塗装作業に入っていきます。
鉄部塗装においては基本的に三度塗りが行われることになり、下塗りにおいては錆び止め塗装を、中塗りと上塗りについては同じ塗料が二回塗り重ねられます。
錆び止め塗料は、鉄部を錆びにくくする効果があり、油性タイプやエポキシ樹脂タイプ、ウレタン樹脂タイプなど、いくつかの種類があります。
活用する錆び止め塗料は、鉄部の箇所や錆びの進行に応じて選択されることになります。
・中塗り・上塗り
下塗りとして錆び止め塗料の塗装が完了すれば、しっかりと乾燥させたうえで、塗料の中塗り・上塗りが行われます。
外壁や屋根塗装においても、三度塗りが基本となっていますが、これは下地を保護するために強固な塗膜を作り上げるために必要な工程となっています。
鉄部においては、下塗りの錆び止め塗料を守る効果があり、鉄の素材を錆びつかせないようにするためにとても重要であると言われています。
中塗りをしたのちにしっかりと乾燥させたうえで、上塗りが行われることになります。
ただし、中塗り・上塗りは同じ塗料を二度重ね塗りされることから、見積書において『上塗り2回』と表現されることもあります。
業者の中には、見積書において『塗装工事一式』など、省略して記載されるケースもありますが、このような場合にはきちんと三度塗りされるのかどうか確認しておく必要があります。
マンションの鉄部塗装の費用相場
マンションの鉄部塗装の費用は、1㎡あたりに算出されることになりますので、施工箇所やその大きさによって大きく異なることになります。
おおむね1㎡あたり3,000円から5,000円程度になっており、施工箇所によって費用相場は次のようになっています。
鉄骨階段 | 10万円~30万円 |
ベランダ | 5万円~15万円 |
ポスト | 5,000円~15,000円 |
雨戸(1枚あたり) | 10,000円~15,000円 |
門扉 | 15,000円~30,000円 |
フェンス | 30,000円~150,000円 |
詳しい費用については、専門業者に相談して見積りを取ってみるようにしましょう。
マンションの鉄部塗装の注意点
マンションの鉄部塗装は、冒頭からもお伝えしている通り、適切に下地処理し、錆び止め塗料をしっかりと塗布したのちに、塗料を塗り重ねていきます。
ケレン作業などの下地処理が適切で、さらには塗料を三度重ね塗りすることによって、強い塗膜を作り上げることができるのです。
しかし、業者の中には、これらの工程を手抜きで省いてしまうことや、経験が足りずに、すぐに不具合を生じさせてしまうケースもあります。
そのため、専門業者に依頼する際には、地元に密着して営業活動を行っていて、経験豊富な業者を選ぶことが重要です。
まとめ
マンションの鉄部塗装について、必要性やタイミング、劣化症状、作業工程、費用などを踏まえ、詳しく解説しました。
マンションの大規模修繕において、鉄骨の外階段や非常階段の扉、玄関扉、エレベーターの扉・枠、手すりなどといった『鉄部塗装』に取り組まれるケースが多くなっています。
鉄部には劣化して錆びが生じないように塗装が施されています。
しかし経年によって劣化すると、塗膜に色褪せやチョーキング現象、ひび割れなどの症状が生じてしまい、そのまま放置していると錆びが生じます。
マンションの美観を損なうことになり、また耐久性や安全性にまで影響を及ぼすことになり、さらには入居者の満足度、入居率、資産価値までにも繋がります。
そのため、劣化症状がみられる場合には、大規模修繕工事のタイミングを待たずに、塗装工事を検討することが大切です。
鉄部塗装で気になることは、経験豊富な専門業者に相談するようにし、アドバイスを受けながら進めていくことをおすすめします。
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