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『大規模修繕』と『大規模改修』の区別はわかりにくいという方も多いのではないでしょうか。
この修繕と改修のほかに『補修』も含めると、どのようなケースでどのようなメンテナンスを行えばいいのか、なかなか判断できないかもしれません。
しかし、マンションの維持管理を計画する際には、それらの違いについて理解しておき、適切な専門業者に相談するのが賢明です。
そこでここでは、大規模修繕と大規模改修の違いを中心に、それぞれの特徴やメリット・デメリットなどを踏まえ、アパマン修繕プロが徹底解説していきましょう。
大規模修繕と大規模改修の違い~国土交通省ガイドラインから徹底解説
国土交通省においては、マンションの大規模修繕、あるいは改修についての重要性について示しており、計画的な修繕が必要であるとしています。
特に、高度経済成長時代に建設されたマンションが老朽化する中で、いつまでも質と価値を長持ちさせるためには、
- 修繕による性能の回復
- 現在の居住水準・生活水準に見合うような性能のグレードアップ
を図り、快適な暮らしができるマンションへと改修しなければならないと示しているのです。
ここでは、国土交通省が公表しているガイドライン『マンションの改修・建替え等について』を参照しながら、大規模修繕と大規模改修の違いについてご紹介していきます。
・『修繕』『改良』『改修』の違い
国土交通省のガイドラインの中では、13~15年程度を目安とした大規模修繕に取り組みながら、その間に『補修』を行い、大規模修繕においては『改良』も加えて、住みよいマンションづくりが大事であるとしています。
ここで言われている『修繕』『改良』『改修』について、国土交通省では次のように、その意味について説明しています。
修繕とは、『部材や設備の劣化部の修理や取替えを行い、劣化した建物又はその部分の性能・機能を実用上支障のない状態まで回復させる行為』のことを言います。
改良とは、『建物各部の性能・機能のグレードアップ(マンションを構成する材料や設備を新しい種類のものに取替えることや、新しい性能・機能等を付加することなど)』することを言います。
改修とは、『修繕及び改良(グレードアップ)により、建築物の性能を改善する変更工事』のことを指しています。
つまり、大規模修繕で行われる外壁や屋根、防水面などの修理や取り換えなどが『修繕』であって、修繕の際に性能をグレードアップする工事を『改良』、さらには修繕と改良を足したものを総称して『改修』と呼ぶのです。
そのようなことから国土交通省は、大規模修繕では劣化した症状を修繕するとともに改良を加えた改修を行うことによって、1回・2回と大規模修繕工事を重ねていくたびに、マンションの性能や快適さが向上していくイメージを持っています。
・大規模修繕工事の定義
国土交通省のガイドラインによりますと、大規模修繕とは次のように定義づけしています。
『マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期間にわたるもの等という』
ポイントをまとめると、
- 資産価値を維持するために行う修繕工事
- 工事内容が大規模
- 工事費が高額
- 工事期間が長期間にわたる
といった条件を踏まえたものが、大規模修繕工事の定義であると言えます。
ちなみに、この内容において、改修工事を『必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う』と分かりやすく定義づけされています。
国土交通省のデータによりますと、大規模修繕工事の工事内容は、
- 鉄部塗装工事
- 外壁補修工事
- 屋上防水工事
が主であるとしており、工事費用については総額6000万円未満が63.6%を占めていることを報告しています。
・改修に関するマニュアル
先にお伝えしている通り、改修とは必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う工事のことを指しています。
国土交通省では、改修によってマンションを再生させる手法、また耐震化についてマニュアル化し、マンションの超寿命化のために情報を公開しています。
改修によるマンションの再生については、マンション管理の基本と改修による再生の重要性をはじめとして、
- 計画修繕と既存性能をグレードアップする改良工事
- 増築、改造等により新たな性能等を付加する改良工事
- 改修によるマンション性能の総合的改善
などについて詳しく解説されています。
また、マンション耐震化については、地震に弱いマンションと大地震等による想定被害をはじめとして、
- マンションの耐震診断について
- マンションの耐震改修工法について
- マンションの耐震改修の進め方について
- 支援制度について
公開されていますので、参考にすると良いでしょう。
※参考
国土交通省『改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル』『マンション耐震化マニュアル』
築50年以上のマンションは修繕や改修で再生できる?
マンションは現在、その戸数は約700万戸近くにまで増えており、その中で、築30年を超えるものは170万戸以上、50年を超えるものは約15万戸存在すると言われています。
高度経済成長がみられた1960年代から1970年代にかけてマンションの建設が増えたこともあり、当時のマンションが築50年を迎えつつあるのです。
これから10年も経たないうちに、築50年を超えるマンションは100万戸を突破することが分かっていることから、マンションの大規模改修はとても重要な局面を迎えていると言えます。
大規模修繕工事によって、建物の損傷を修繕するだけではなく、大規模な改修によって性能や機能を、現在の水準にまで引き上げ、快適な生活づくりを目指していくことが大切であると国土交通省は考えています。
・築50年のマンションは建て替えしなければならない?大規模な改修によって再生可能?
築50年のマンションでは『建て替え』が検討されることもありますが、50年を超えたからと言って建て替えしなければならないという訳ではありません。
そもそもマンションの耐用年数には諸説あり、国土交通省が公表している『期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について』においては、次のような研究内容が公表されています。
大蔵省主税局(1951)「固定資産の耐用年数の算定方式」において、構造体としての鉄筋コンクリートの効用持続年数として、一般の建物であれば120年、外装仕上げなどによって改修を施した場合には延命して150年になると公表されています。
また、飯塚裕氏の著書「建築の維持管理(鹿島出版会1979年)」においては、鉄筋コンクリ-ト造建物の物理的寿命については、実際の建物の減耗度調査のうえ建物の減耗度と実際の使用年数との関係から、117年と推定しています。
さまざまなマンションを見渡してみても、管理や運営が行き届いているケースであれば、定期的な大規模修繕工事において耐震補修などにも取り組まれて延命している建物も少なくありません。
また、老朽化が進んでしまい、建て替えを余儀なくされたマンションも数多くあることからしても、やはり大規模改修は資産を守る意味からしても重要な意味を持つと言えるのではないでしょうか。
・大規模改修なのか建て替えなのか
マンションの資産価値を維持していくためには、『マンション再生』の視点がとても重要になり、大規模修繕や改修に取り組むことによって居住環境の状態維持や改善が図れます。
しかし、建築から経年によって少しずつ劣化が生じることになり、また現代の居住環境や生活機能にそぐわなくなることから、修繕を計画的に行うことはもちろんのこと、改修によって時代によって求められる機能や性能にグレードアップする必要性もあるでしょう。
必要に応じて補修を行い、計画的に大規模修繕、さらには改修工事を適切に行っていない場合には、経年によって機能や性能が著しく低下してしまうことにも繋がってしまいます。
そのため、劣化や損傷の程度によっては、安全面なども考慮したうえで、改修と建て替えとを比較して、場合によっては建て替えされるケースもあります。
ただ、上記でもお伝えしたように、マンションの建物としての耐久性は50年以上であるという研究結果も多いことから、いつまでも建物の資産価値を守るためにも、修繕と改修を繰り返すことによって居住環境を守り、超寿命化を実現できるのです。
マンションの改修に取り組むために
マンションは築年数が経過するごとに、補修や修繕が必要になることはもちろんのこと、機能や性能が時代にマッチしなくなることから改修も求められます。
どのように改修に取り組めば、居住者の暮らしの快適さに繋がるのか詳しくご紹介しましょう。
・大規模修繕工事だけではなく改修に取り組むメリット
- 改修によって時代の変化にマッチさせることができる
- 機能や性能がアップし居住者の暮らしが快適になる
- 劣化による不安を解消し資産価値を高めることができる
大規模修繕工事は、上記でもお伝えしている通り、マンションの資産価値を維持するための工事になりますが、改修にも取り組んでおくことで多くのメリットを享受することができます。
例えば、築50年のマンションである場合、どうしても50年前の当時の性能や機能のままであるため、修繕工事によって維持したとしても、現在にみられる建物とは大きく違いが生じることになります。
例えば、段差が多く、体の不自由な方であれば生活が不自由になる可能性がありますし、セキュリティも低く、安心した生活ができないかもしれません。
それが改修工事によってバリアフリー化が進み、セキュリティが向上し、宅配ロッカーなど便利な機能が付加されれば、とても快適な暮らしが可能になるのではないでしょうか。
また、外観デザインをリニューアルすることや、内装にも手直しを加えることによって、入居率が高まる可能性も考えられます。
居住者にとっては、築年数が経過するごとに劣化する状態を目の当たりにしているため、このような改修の取り組みは、安心した生活に繋がります。
そのため、資産価値を向上させることにもなるのではないでしょうか。
・補修、そして計画的な修繕、改修のために
国土交通省においても、劣化や損傷については都度補修し、計画的に大規模修繕に取り組み、また改良を加えて改修することによって、マンションの機能や性能がアップし、資産価値を高められると報告されています。
つまり、定期的に建物の劣化や不具合の状況を把握できる『建物調査』に取り組んでおくことが大切であると言えます。
マンションの大規模修繕工事においては、外壁に対する塗装や修繕、屋上やバルコニーの防水工事などに取り組んでいくことになりますが、これらの劣化状況においてはなかなか外観から見ただけでは判断できません。
例えば、外壁タイルの建物調査であれば、目視だけではなく、実際に叩いてみて外壁タイルの浮きや剥がれなどの状況を確認します。
浮いた状態でそのまま放置していると、外壁タイルが剥がれてしまい、そのまま剥がれ落ちて通行人に当たってしまい、大事故になる可能性も考えられます。
建物診断をしておけば、状況によって必要な補修を行い、また大規模修繕工事に向けて工事内容を検討し、おおよその工事費用を算出することも可能です。
さらには、改修に対するアドバイスもできますので、居住者の快適な暮らしにも繋げられます。
そのようなことから、定期的に建物調査をしておくことはとても重要なことなのです。
まとめ
大規模修繕と大規模改修の違いの違いについて国土交通省ガイドラインを用いて解説し、築年数50年以上のマンションの再生についても詳しくご紹介しました。
マンションは経年によって劣化し、損傷個所などが発生することから、日常的な補修、そして計画的な大規模修繕工事、さらには機能性をアップさせる改修工事が必要になります。
あと10年も経たないうちに、築50年以上のマンションは100万戸を超えると言われていることから、補修、修繕、改修はとても重要な意味を持ちます。
特に、研究データによってはマンションの耐用年数は100年以上だというものもあることから、丁寧に補修、修繕、改修に取り組み、延命することが大切です。
そのためには定期的な建物調査が重要であり、経験豊富な専門業者に相談するようにし、アドバイスを受けながら修繕や補修、改修を進めていくようにしましょう。
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