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マンションの修繕積立金は、一般的には新築時から居住者から徴収されているもので、将来的な劣化や損傷を修繕するために備えています。
ただ、国土交通省が公表しているデータによりますと、修繕積立金の積立額が修繕計画に比べて不足していると答えているマンションが3割以上にも及んでいます。
大規模修繕工事の際に修繕費用が足りなくなってしまうと、必要な修繕工事ができなくなってしまい、マンションの資産価値を下げてしまうことにも繋がります。
ではなぜ、修繕積立金が足りなくなってしまうのでしょうか?
そこでここでは、マンションの修繕積立金が足りなくなるという問題について、その実態や原因、対処法などを踏まえ、アパマン修繕プロが徹底解説していきましょう。
マンション修繕積立金が足りない実態
冒頭にもお伝えした通り、マンションの3件に1件は修繕計画に対して不足しているということが、国土交通省が提供している『平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状』によって明らかになっています。
もう少しマンション修繕積立金の状況についてご紹介し、修繕積立金が足りなくなるとどのような問題が生じるのか、データをみながら解説していきましょう。
・ 修繕計画に対する修繕積立金の不足
国土交通省のデータによりますと、修繕計画に対する修繕積立金の不足を生じさせているマンションは34.8%に上っています。
不足しているマンションの中で、不足の割合が20%超であると答えているのが15.5%に達していることが分かっています。
対して、修繕積立金が計画に比べて余剰があると答えているマンションは33.8%となっています。
このデータでは、残りの31.4%が不明となっていますが、計画通りに修繕積立金を準備しているマンションは意外にも少ない印象を持ちます。
当然ながら、修繕積立金が不足している場合、計画通りの修繕工事を行うのであれば、居住者から一時金を徴収することや、金融機関から借り入れすることなどが考えられます。
あるいは、工事を延期することや修繕計画を見直すような対応も考えられますが、もし必要な修繕が行われないということになるならば、居住者の不満が増大することや資産価値を下げてしまうことにも繋がりかねません。
・長期修繕計画と修繕積立金の状況
一般的にはマンションは大規模修繕工事に取り組むために長期修繕計画を作成し、その計画に基づいて修繕積立金を居住者から徴収しています。
ただ、長期修繕計画を作成している割合は90.9%となっており、約1割程度のマンションでは作成していない状況も分かっています。
さらに、長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定しているというマンションの割合は、53.6%に留まっている現状があります。
長期修繕計画と修繕積立金がリンクしていないため、実際の修繕工事において、不足しがちなのではないでしょうか。
・修繕積立金の積立方式が影響している?
次に修繕積立金の平均額を見てみると、平成11年度、15年度、20年度、25年度、30年度と追っていくに連れて増加傾向にあり、駐車場使用料等からの充当額を含んだ修繕積立金の平均額は12,268円となっています。
ただ、マンションの完成年度別に、この修繕積立金の平均額を比較してみると、平成22年以降に建築されたマンションでは大幅に平均より低く、8,820円となっています。
つまり、平均値よりも3,000円~4,000円程度、低くなっている現状があります。
この理由として、修繕積立金の積立方式の違いによるものだと分かります。
築年数が古いマンションほど、修繕積立金の積立方式が『均等積立方式』になっており、基本的に何年居住していても改定がない限りは同じ金額を支払い続けることになります。
しかし、平成22年以降に建築されたマンションでは、全体の67.8%が『段階増額積立方式』を採用していることが分かります。
『段階増額積立方式』とは、新築後の修繕積立金の額が抑えられており、5年~10年程度の一定期間が経過するごとに徐々に値上げしていくという方式になります。
そのため、均等積立方式と比較すると、同じ額を徴収するためには、かなり長い期間の徴収が必要になる計算になり、同じ額になるまでには30年から40年になるともいわれます。
また、値上げする時期については、居住者の決議が必要になりますから反発が予想され、なかなかうまく修繕積立金が確保できないという現状が考えられるのです。
・国土交通省は均等積立方式を推奨している
上記でもお伝えした『段階増額積立方式』ですが、マンションの新築時においては修繕積立金が低く設定されているため、販売時には有利になることが理解できます。
ただ、将来にわたって段階的に増額されていくのは、そのマンションで永住を考えている方にとっては大きな負担となるのは間違いありません。
しかし、値上げをうまく実施しないことには、いつまで経っても修繕積立金が不足している状態のままですので、居住者に対して納得する説明が必要になるでしょう。
国土交通省では、かつて多かった均等積立方式を推奨しています。
長期的に安定して徴収ができ、資産価値を維持できる修繕工事に取り組めるからであり、段階増額積立方式から変更するマンションも増えています。
マンション修繕積立金が足りない原因
上記においては、マンションの修繕積立金が足りない状況についてデータを用いてご紹介しました。
では、実際に修繕積立金が足りなくなってしまう原因はどこにあるのでしょう。
こちらについても、国土交通省が提供している『平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状』のデータを活用しながら、解説していきます。
・修繕積立金の額が長期修繕計画に伴っていない
国土交通省のデータによりますと、平成30年において長期修繕計画を作成している割合は90.6%に達していますが、計画期間25年以上の修繕積立金の額を設定している割合は53.36%に留まっています。
新築時から『均等積立方式』によって、十分な修繕積立金を徴収しており、修繕工事のための費用をしっかりと確保しているのであれば問題はありません。
ただ、そのまま同じ額の修繕積立金を徴収することによって、将来的に必要な修繕工事が増えてくると、足りなくなってしまう可能性が考えられます。
また、『段階増額積立方式』の場合、おおむね10年ごとに修繕積立金が増額していくことになりますが、増額する際には居住者の決議が必要になります。
上記でもお伝えした通り、段階増額積立方式での徴収は、均等積立方式と比較すると、30年から40年程度でようやく同額程度まで追いつくことを考えると、計画期間25年未満しか積立額を設定していないのは、不十分と言わざるを得ないでしょう。
つまり、均等積立方式・段階増額積立方式のいずれにおいても、新築時において修繕積立金を低く設定しすぎてしまうと、あとあと足りなくなってしまう可能性が高いということです。
・長期修繕計画が機能していない
長期修繕計画が作成してある割合は9割を超えているというデータをご紹介しましたが、新築時の長期修繕計画はまったく機能していないというものが少なくありません。
というのも、長期修繕計画を作成する際のひな型となる、標準様式をそのまま採用しているだけで、それぞれのマンションを想定して作成していないケースも多いのです。
長期修繕計画の標準様式とは、国土交通省によって提供されているもので、一般的な中高層の単棟型マンションを想定して作られているひな型です。
本来であれば、このひな型をもとにして、必要な項目を追加していくことや、不要な項目を削除していくことによって、機能的な修繕計画にカスタマイズできます。
しかし、そのようなカスタマイズを実施しない場合には、当然ながら架空のマンションを想定して作られた長期修繕計画ですから、建物の仕様もまったく異なることになるのです。
ちなみに、国土交通省のデータによりますと、5年ごとに長期修繕計画を見直していると答えているマンションの割合は56.5%であり、見直しを行っていない割合は5.7%に上っています。
・『段階増額積立方式』を採用しているため
先ほどもご紹介しましたが、国土交通省では均等積立方式での修繕積立金の積立方法を推奨しており、段階増額積立方式では計画通りに積み立てできないことが多いと指摘しています。
ただ、近年では圧倒的に段階増額積立方式のマンションが多くみられ、新築時の修繕積立金の額がかなり低く設定してあることが分かります。
平成30年度における修繕積立金の平均額は12,268円であるのに対して、平成22年以降に建築されたマンションでは8,820円になっているのを見れば、その差は歴然です。
段階増額積立方式のデメリットは、増額時に居住者からの合意形成が必要になりますが、大規模修繕工事のために必要になると言えども、やはり合意を得るのは難しいと言わざるを得ません。
そのため、綿密な長期修繕計画を作成するとともに、積立方式の内容について十分に説明し、スムーズに増額の合意が得られるような工夫が必要です。
新築時のマンション購入者から、修繕積立基金として一時金を徴収するケースも増えており、また近年では均等積立方式に変更するマンションも増えています。
まずは長期修繕計画の見直しを行い、必要な修繕費用を明らかにすることによって、均等積立方式への変更も視野に進めていくことも一つの選択肢になると言えるのではないでしょうか。
マンション修繕積立金が足りない場合の対処法
ではマンションの修繕積立金が足りない場合には、どのように対処すればいいのでしょうか。
よくみられる対処法について5つにまとめてみましたのでご紹介いたしましょう。
・一時金を徴収する
修繕積立金の不足分が明らかになれば、その金額をマンションの戸数で均等に一時金として徴収することができます。
金融機関から借り入れするようなケースでは、どうしても金利負担が発生してしまいますが、そのような負担なく不足分を補えるメリットがあります。
ただ、居住者の合意が必要になりますので、うまく徴収できない可能性も考えられます。
・不足額の借り入れ
金融機関から不足分を借り入れることによって、修繕積立金を補うことが可能です。
スムーズに資金を用意できますが、居住者の合意が必要になり、金利の負担、さらには返済のために修繕積立金の増額も想定できますから、十分な検討が必要になります。
・修繕積立金の増額
将来的な不足分を埋めるために、修繕積立金の増額も一つの選択肢になります。
一時金のように大きな負担を強いられることなく、しかも借入時のように金利負担もありませんから、メリットは大きいでしょう。
ただし、長期的な視点で不足分の穴埋めを行う必要があり、居住者からの合意を得るには、負担をできる限り低く抑えるのが大切になります。
・大規模修繕の延期
修繕積立金の不足が解消するまで、大規模修繕工事を延期するのも一つの方法になります。
ただし、必要な時期に必要な補修を行わないのは、マンションの資産価値を下げてしまうことにも繋がりますので、望ましい方法であるとは言えません。
そのため、大規模修繕工事を分割して、緊急性の高い箇所から修繕を行っていくという方法も対処法として考えられます。
まとめ
マンションの大規模修繕工事において、「修繕積立金が足りない」というケースが増えており、その実態や原因、対処法について詳しくご紹介しました。
国土交通省のデータによりますと、長期修繕計画に比べて修繕積立金が不足していると答えているマンションの割合は3割以上に達しています。
その原因として、長期修繕計画が機能していないことや、修繕積立金の設定が低すぎる、あるいは修繕積立金の積立方式に問題があるケースが見られています。
当然ながら、大規模修繕工事に取り組むにあたって、修繕費用が足りない場合には、必要な修繕工事が行えず、マンションの資産価値を下げてしまうことになるのです。
そのため、綿密な長期修繕計画を作成し、その計画に沿って修繕積立金の額を設定して、将来に備える必要があると言えるでしょう。
長期修繕計画の作成について、どのように進めていけばいいのか分からない場合には、地元で経験豊富な大規模修繕の専門業者に相談するようにし、アドバイスを受けながら進めていくようにしましょう。
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