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マンション屋上の防水層のメンテナンスが必要なタイミングとなり、どの工法で防水工事を行うべきか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
防水工事にはいくつかの工法があり、それぞれに適している屋上の形状は異なり、またコストや耐久性、工事期間などにも違いがあります。
その中で多く採用されている防水工事に『ウレタン防水』があります。
複雑な形状であっても問題なく施工でき、コストも低めであり、耐久性にも優れているために、マンションの防水工事において主流とも言われているのです。
ただ、ほかの工法と比較して、本当にウレタン防水を採用していいのか、気になる方もいらっしゃるでしょう。
そこでここでは、マンション屋上の防水工事で注目度の高いウレタン防水について、その特徴や施工方法、劣化症状などを踏まえて、アパマン修繕プロが徹底解説していきましょう。
マンション屋上の防水工事『ウレタン防水』とは
マンションの平らな屋上のような場合には、防水工事でウレタン防水が採用されるケースが多く見られています。
いくつかある防水工事の中で、FRP防水が採用されるケースが多くなりましたが、日本ではもっとも採用されている工法で、まだまだ主流であると言えます。
液体状のウレタン樹脂を塗装して防水層を形成していくため、屋上だけではなくバルコニーやベランダなどでも活用されるシーンが多くなっています。
そこでここでは、ウレタン防水の特徴についてお伝えし、施工法や劣化症状などについてもご紹介していきましょう。
・ウレタン防水とは
ウレタン防水とは、液体状のウレタン樹脂を塗って防水層を形成していくものであり、すでに50年以上もの歴史を持っている工法です。
ウレタン樹脂とは、私たちの生活の中で使用している接着剤でも活用されている素材であり、下地や空気中の湿気と反応して硬化する特徴を持っています。
ウレタン防水が登場するまでは、アスファルト防水やシート防水が主流でしたが、1970年ごろからはそれらに代わって主流の工法となりました。
ウレタン樹脂を塗装する工法であるために、シート防水が苦手としている複雑な形状でも問題なく施工ができるメリットがあり、アスファルト防水よりも軽量であるために、建物に負担を掛けることはありません。
メンテナンス費用も比較的安価であることから、大規模修繕工事においてできる限りコストを抑えたいというニーズにも応えることができます。
・ウレタン防水の施工法
ウレタン防水の施工法にはいくつかの種類がありますが、その中でも採用されるケースが多いのが『密着工法』と『通気緩衝工法』です。
『密着工法』とは、ウレタン樹脂を下地に直接塗装していく工法のことで、メッシュシートを貼り付けて、その上からウレタン樹脂を塗り重ねて防水槽を形成していきます。
比較的短期間で工事を完了させることができ、費用負担も安価に抑えられるメリットがあります。
『通気緩衝工法』とは、通気緩衝シートと呼ばれる無数の穴が開いたシートを張り付けて、ウレタン樹脂を塗り重ねていく工法です。
通気緩衝シートは下地と密着させないために、下地に水分を含んでいるような場合でも施工ができるメリットがあります。
施工法やメリット・デメリットについては、詳しく後述しておりますので、そちらをご覧ください。
・ウレタン防水の劣化症状
ウレタン防水の耐用年数はおよそ13年程度と言われていることから、大規模修繕のタイミングでメンテナンスされるケースが多くなっています。
ただ、防水層を保護するために表面にトップコートが塗装されていますが、その保護材が5年~7年程度で劣化して、ひび割れが生じやすくなります。
そのため、次回の大規模修繕までにトップコートを塗りなおしてメンテナンスしておく必要があります。
ウレタン樹脂は紫外線に弱い性質があるためトップコートによる保護がとても重要で、トップコートが劣化しているにもかかわらずに放置していると、防水層まで損傷が生じて雨漏りの原因になってしまいますので注意が必要です。
防水層そのものが劣化や損傷が生じると、塗膜の剥がれや浮き、膨れなどの症状が見られるようになり、下地に水分を含んでいる可能性が考えられます。
下地に水分を含んでいる状態では、雨漏りするリスクがとても高くなっているために、早めに専門業者に相談してメンテナンスするようにしましょう。
ウレタン防水に多く見られる2種類の施工方法の特徴
上記でもお伝えした通り、ウレタン防水には『密着工法』『通気緩衝工法』の2種類で施工されるケースが多くなっています。
ウレタン防水は形状を問わず施工が可能ではありますが、2種類の施工法にはそれぞれに特徴があり、適した箇所に採用されることになります。
では、どのような特徴があるのか、2種類の施工方法について詳しくご紹介していきましょう。
・密着工法
密着工法とは、液体状のウレタン樹脂を直接下地に塗り、メッシュシートを張り付けて、さらにウレタン防水材を塗り重ねて防水層を形成する工法のことを指しています。
塗膜の厚みは2㎜以上になるように塗り重ねていき、通常3㎜から4㎜程度の厚さになるように施工することが一般的となっており、最後に保護材であるトップコートを塗装し仕上げとなります。
密着工法と次にご紹介する通気緩衝工法との大きな違いは、下地に直接塗り重ねていくかどうかにあり、直接塗り重ねる密着工法においては下地の影響を受けやすいと言われています。
そのため、密着工法を選択する場合には、塗り重ねる前に下地をしっかりと調整しておくことが重要であり、調整が不十分の場合には、施工後の防水層にひび割れや膨れなどといった施工不良を生じさせてしまうことがあります。
特に、下地に水分が含まれているような場合にそのまま施工してしまうと、施工不良を引き起こす可能性が高くなってしまいますので、しっかりと乾燥させておく必要があります。
そのため、すでに雨漏りしているような、下地に水分を含んでいる状態で施工する必要がある場合には、通気緩衝工法を選択しておくことが重要になります。
・通気緩衝工法
通気緩衝工法とは、水分を含んでいると考えられるコンクリートの下地に用いられる工法で、通気性能がある通気緩衝シートの上にウレタン樹脂を塗り重ねていくという特徴を持っています。
密着工法を選択する場合、下地に水分を含んでいる状態であれば、ウレタン防水材を塗り重ねて防水層を形成した後に、水分が蒸発しても外部に逃げすことができず、表面が膨れや剥がれなどの施工不良が生じてしまう可能性があります。
しかし、通気緩衝工法の場合であれば、裏地に特殊な加工が施されている通気緩衝シートを活用し、湿気が通気しやすい構造になっています。
さらには湿気を外側に逃がす役割として脱気筒が設けられており、蒸気が上に逃げている性質を利用して、自然に湿気が外側に逃げるような仕組みになっているのです。
そのため、下地に水分が多く含まれている場所には、通気緩衝工法が適していると言えるでしょう。
施工においては、下地に専用の接着剤を塗り、通気緩衝シートを張っていき、屋上の勾配を観察して最も高い位置に脱気筒を設置してウレタン樹脂を塗り重ねていきます。
ウレタン樹脂は基本的に2回塗り重ねていくことになり、塗膜の厚みは2㎜以上になるようにします。
ウレタン防水のメリット・デメリット
メリットの大きいウレタン防水ではありますが、デメリットもありますので、双方からバランスを比較して検討することが重要です。
いくつかのポイントにまとめてみましたので、詳しくご紹介していきましょう。
・ウレタン防水のメリット
- 複雑な形状でも施工可能
- 軽量で建物に負担がかからない
- 安価で施工できる
- 経年劣化してもウレタン樹脂を重ね塗りすればいい
ウレタン防水は、施工する場所の形状や床面積に問わず防水層の形成が可能であるため、マンションの屋上やアパートのベランダなど、さまざまな場所で施工できるメリットを持っています。
ウレタン樹脂を塗り重ねていくことで防水層を形成することから、形状が複雑でも仕上がりに継ぎ目もできず、施工不良で雨漏りを引き起こすような心配も少ないです。
ほかの防水工事と比較して軽量であるため、建物に負担をかけるのも少なくて済みます。
メンテナンス費用は比較的安価で済むのも、多くの費用が必要になる大規模修繕においても安心できる材料ではないでしょうか。
経年によって劣化が生じた場合には、シート防水のように既存の防水層をはがす必要はなく、そのままウレタン樹脂を塗り重ねできるので手間や時間が軽減されます。
メンテナンス時の廃棄物も少ないために、環境にも優しい工法であると言えるでしょう。
・ウレタン防水のデメリット
- 施工が難しい
- 硬化するまでに時間がかかる
- 定期的にトップコートの塗り直しが必要
ウレタン防水は、冒頭から何度もお伝えしている通り、ウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を形成していきますが、この作業は職人の手作業で行われます。
ムラなく均一に塗り重ねなければならず、しかも一定の厚さにまで仕上げなければならないのは、実は簡単な作業ではないのです。
もし、経験の足りない職人が塗布したとしたら、厚みの足りない部分を作ってしまい、その箇所から劣化や損傷を生じさせてしまう可能性もあります。
そのため、熟練の施工業者を選ばなければならないということなのです。
また、ウレタン樹脂を塗り重ねるには、しっかりと乾燥させたうえで施工しなければならないのですが、乾燥には時間が掛かる性質を持っています。
そのため、近年増えているFRP防水と比較すると、どうしても施工期間が長くなってしまう可能性があるのです。
さらに、ウレタン樹脂は紫外線に弱いため、塗膜には保護膜であるトップコートを塗装しておく必要があります。
ただ、トップコートの耐用年数は一般的に5年から7年程度と言われており、5年に一度は塗り替えなければなりません。
大規模修繕を仮に15年に一度のタイミングで行うのであれば、その間に二度のトップコート塗り直しが考えられ、また状況によっては防水層そのもののメンテナンスが必要になることもあります。
ウレタン防水にメンテナンスが必要な劣化症状
- 防水層表面のひび割れ・剥がれ
- 防水層表面の膨れ・浮き
- 防水層の亀裂
ウレタン防水の耐用年数は13年~15年前後であり、さらに表面に保護材として塗装しているトップコートにおいては5年~7年で劣化や損傷が見られるようになります。
そのため、ウレタン防水を次の大規模修繕まで維持するためには、劣化や損傷に早く気づき、必要なメンテナンスに取り組んでおくことが重要です。
初期的な劣化としては、防水層表面にひび割れや剥がれが見られるようになります。
これは塗装されているトップコートの劣化であり、このような状態が見られるとそろそろ塗り替えを検討しておく必要があります。
さらに劣化が進行すると、ウレタン防水そのものに膨れや浮きが生じるケースがありますが、このような状態がみられると下地に雨水を含んでいる可能性があり、雨漏りを防ぐためにも早めにメンテナンスしておかねばなりません。
また防水層そのものに亀裂が生じている場合には、そこから下地に雨水が染み込んでしまい、雨漏りや腐食を進行させてしまう可能性がありますから、速やかに専門業者に相談するようにしましょう。
まとめ
マンション屋上の防水工事で注目度の高いウレタン防水について、その特徴や施工方法、劣化症状などを踏まえて、詳しく解説しました。
ウレタン防水は、下地にウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を形成する方法のことで、複雑な形状の場所でも施工できるために、マンション屋上やベランダなどで活用されています。
比較的安価に施工でき、メンテナンス方法も手軽であるなどメリットが多いですが、施工が難しく職人の経験が必要で、施工に時間がかかるというデメリットも存在します。
そのため、メリット・デメリットを比較して、そのバランスを比べたうえで、どの施工法を選択するのか決めるのがおすすめです。
マンションやアパートの大規模修繕を検討しているのであれば、地元で経験豊富な大規模修繕の専門業者に相談し、アドバイスを受けながら進めていくと良いでしょう。
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