令和5年度の税制改正により、マンションの長寿命化を促進するための新たな固定資産税の減額措置が創設されました。これにより、マンション所有者にとって大規模修繕が税金面で有利になる可能性が広がり、今後の修繕計画に影響を与えることが予想されます。
この措置は、建物の価値を維持しつつ、経済的負担を軽減することを目的としており、適切な手続きによって固定資産税が減額される可能性があります。
本記事では、川崎市の大規模修繕を専門とする業者が、減額の具体的な条件や申請手続きなど、制度全般について、わかりやすく解説します。
マンション所有者の皆様にとって有益な情報を提供し、最適な修繕タイミングや手続きについて理解を深めていただける内容です。
参考:『大規模の修繕等が行われたマンションに係る固定資産税の減額』
目次
マンションの大規模修繕による固定資産税の減額とは
マンションの大規模修繕を計画する際、費用負担だけでなく、将来的な税制優遇措置を考慮することが重要です。令和5年度の税制改正によって、マンションの長寿命化を促進するために大規模修繕を行った場合、固定資産税の減額措置を受けることができます。
この制度は、マンションの価値を維持するための修繕が行われた際、経済的な負担を軽減し、所有者にとって大きなメリットとなります。
ここでは、具体的な減額の内容や申請手続きについて徹底解説します。減額の適用条件、修繕工事の範囲、手続きのポイントなどを詳しく説明し、マンション所有者の皆様がこの制度を最大限に活用できるようサポートいたします。
固定資産税の減額対象となる長寿命化工事とは
マンションの大規模修繕において、固定資産税の減額対象となる「長寿命化工事」とは、建物の寿命を延ばし、安全性や価値を維持するために行われる特定の工事を指します。
これらの工事を実施することで、建物の老朽化を防ぎ、長期間にわたって快適な居住環境を保つことができます。以下で、具体的な工事内容について詳しく解説します。
①屋根防水工事
屋根防水工事は、建物の屋根部分に防水処理を施し、雨水や湿気が建物内部に侵入するのを防ぐための工事です。特に、経年劣化により防水性能が低下している場合、雨漏りのリスクが高まるため、屋根の防水工事は重要です。防水シートの張り替えや防水塗料の塗布が主な作業となり、これにより屋根の耐久性が大幅に向上します。
②床防水工事
床防水工事は、バルコニーやテラス、共用部分の床面に防水処理を施す工事です。これにより、床部分からの雨水や湿気の浸透を防ぎます。特に、バルコニーの床は雨風にさらされやすく、放置すると下の階に水漏れを引き起こす可能性があります。床防水工事により、建物全体の寿命が延び、長期間にわたり建物を保護します。
③外壁塗装等工事
外壁塗装工事は、建物の外壁を保護し、美観を保つために行われる工事です。外壁は風雨や紫外線にさらされ続けるため、定期的に塗装を行わないと、ひび割れや剥がれが生じ、建物内部への水分侵入や構造の劣化を引き起こすリスクがあります。外壁塗装には、劣化した部分の補修や、防水性・耐久性を向上させるための特殊な塗料を使用します。これにより、建物全体の耐久性が向上し、長期的なメンテナンスコストの削減にもつながります。
固定資産税の減額対象となるマンションは
マンションの大規模修繕による固定資産税の減額を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。これらは、区分所有マンションが対象で、適用される具体的な要件です。条件を、わかりやすく説明します。
①新築から20年以上経過していること
固定資産税の減額を受けられるマンションは、新築された日から20年以上が経過している必要があります。これは、築年数が古いマンションが増加しているためで、居住者が安心して暮らすためには、修繕が不可欠であるからです。また、建物の価値が低下しやすいため、税制面での優遇措置を適用し、建物の適切な管理を行う必要があります。
②総戸数が10戸以上であること
対象となるマンションは、総戸数が10戸以上であることが条件です。これは、ある程度の規模があるマンションが優遇措置の対象となることを意味します。小規模なマンションや個人住宅はこの要件に該当しません。特に、マンションのような区分所有物で、総戸数が多くなればなるほど、修繕に取り組むための合意形成が難しいケースが多いです。適切な修繕のためにも、うまく活用すべき制度であると言えるでしょう。
③長寿命化工事の実施履歴
固定資産税の減額を受けるには、過去に1度以上、長寿命化を目的とした工事を行っていることが必要です。具体的には、外壁塗装、床や屋根の防水工事などが該当します。また、令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に、2回目以降の工事を完了していることも要件となります。
④管理計画認定マンションまたは助言指導を受けたマンション
減額措置を受けるためには、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。
1.管理計画認定マンション
具体的要件として、令和3年9月1日以降に、修繕積立金の額を管理計画の認定基準まで引き上げていることが条件になっています。これは、計画的な管理と修繕が行われているマンションが対象となることを示しています。また、川崎市では「川崎市マンション管理計画認定制度」が定められています。次の章で詳しく解説します。
2.助言指導を受けたマンション
管理組合が専門家から助言や指導を受け、長期修繕計画を作成または見直し、その計画が一定の基準を満たしていることが必要です。これは、長期的な維持管理をしっかり行っているマンションを対象とするためです。長期修繕計画の作成または見直しの基準については、国土交通省によって提示されています。
⑤他の税制優遇措置との同時適用不可
耐震改修やバリアフリー、省エネ改修など、他の税制優遇措置を受けている場合、この大規模修繕による減額措置は同時に適用されません。重複して優遇措置を受けられない点に注意が必要です。
⑥過去に同様の減額措置を受けていないこと
以前に同じマンションで大規模修繕による減額措置を受けたことがない場合に限り、再度減額の申請が可能です。
固定資産税が減額される期間・範囲について
固定資産税の減額が適用されるのは、長寿命化工事が完了した翌年の1月1日を基準とした課税年度分です。つまり、修繕工事が終わった翌年から固定資産税が減額される形になります。このタイミングを理解しておくことで、減額が適用される年度を正確に把握できます。
減額の適用範囲については、以下の通りです。特に、居住用部分の固定資産税が対象となります。
①併用住宅(居住用と他の用途が併用されている建物)の場合、建物の専有部分の半分以上が居住用である場合に、減額が適用されます。つまり、居住部分が半分以上を占める併用住宅でなければ、減額対象にはなりません。
②床面積が100平方メートル以下の場合
この場合、居住部分にかかる固定資産税額の2分の1が減額されます。例えば、100平方メートル以下のマンションの一戸の固定資産税が10万円だとすると、その半分の5万円が減額されることになります。
③床面積が100平方メートルを超える場合
この場合も、100平方メートルに相当する部分の居住部分に対して、固定資産税額の2分の1が減額されます。たとえば、120平方メートルのマンションの場合は、最初の100平方メートル分だけが減額対象となり、残りの20平方メートル分には減額が適用されません。
固定資産税減額のための申告手続について
マンションの大規模修繕を行った際、固定資産税の減額を受けるためには、適切な申告手続きが必要です。以下では、申告できる人、申告場所、提出書類、申告期間についてわかりやすく解説します。
①申告できる人
固定資産税の減額申告を行えるのは、次のいずれかの人です。
- 納税義務者:マンションの所有者で、固定資産税を支払う義務のある人。
- 納税管理人:納税義務者の代わりに税金を管理している人。
- 代理人:納税義務者や納税管理人から委任された人。ただし、申請には委任状が必要です。
②申告する場所
申告は、マンションが所在する区を担当する市税事務所資産税課家屋係や市税分室家屋担当で行います。工事を行ったマンションがある場所の市税事務所で手続きをする必要がありますので注意が必要です。
③提出する書類
申告には、いくつかの書類を提出する必要があります。これには共通書類と、特定の条件に応じた書類が含まれます。
1.共通の提出書類
- 大規模修繕を行ったマンションに係る固定資産税減額申告書
- マンションの総戸数を確認できる書類(設計図書の写しなど)
- 過去の工事証明書(建築士またはマンション管理士の証明)
- 大規模修繕工事証明書(建築士または住宅瑕疵担保責任保険法人の証明)
2.管理計画認定マンションの場合
- 川崎市が発行する管理計画の認定通知書または変更認定通知書
- 修繕積立金の引き上げを証明する書類(建築士またはマンション管理士の証明)
3.助言や指導を受けた管理組合の管理者等に係るマンションの場合
- 川崎市が証明する助言・指導内容実施等証明書
④申告期間
申告は、2回目以降の長寿命化工事を完了した日から3か月以内に行わなければなりません。ただし、やむを得ない事情がある場合は、3か月を過ぎても減額が認められることがありますので、その際は市税事務所に問い合わせることが重要です。
川崎市マンション管理計画認定制度について
「マンション管理計画認定制度」は、マンションの適切な管理を促進するための制度です。この制度は、国の法律に基づいて、一定の基準を満たしたマンションの管理計画を認定する仕組みで、認定を受けることで様々なメリットがあります。
特に、減税制度を受けるためには、修繕積立金の額を管理計画の認定基準まで引き上げていることが条件になっており、管理計画認定マンションである必要があります。
制度の概要
この認定制度の対象となるのは、川崎市内にあるマンションで、複数の区分所有者が住んでいる建物です。つまり、個人所有の住宅ではなく、共同住宅としてのマンションが対象です。
認定を受けるメリット
この制度で認定を受けたマンションは、市場での評価が高まり、売却時に有利になる可能性があります。管理組合(区分所有者)の意識向上にもつながり、マンションの管理水準を維持・向上しやすくなると期待されています。
また、認定を取得すると、住宅金融支援機構が提供する「マンション共用部リフォーム融資」の金利優遇や、長期固定金利住宅ローンの「フラット35(維持保全型)」の金利優遇といった金融面でのメリットもあります。これにより、マンションのリフォームや購入にかかるコストが軽減される可能性があります。
認定の申請者
申請は、マンションの管理組合の管理者(例えば、総会で選ばれた理事長)や管理組合法人の理事が行います。もし、団地型や複合用途型マンションで複数の管理者がいる場合は、それぞれの管理者の権限に基づいて申請者が異なることがあります。
認定の有効期間
認定を受けたマンションの管理計画は、認定日から5年間有効です。有効期間が過ぎる前に更新申請を行えば、引き続き認定を受けられます。
認定の申請手続き
認定の申請には、マンション管理センターが発行する「事前確認適合証」が必要です。この証明書は、マンション管理センターの「管理計画認定手続き支援サービス」を通じて取得できます。
川崎市の独自基準
川崎市では、認定を受けるための条件として「川崎市マンション管理組合登録・支援制度」に登録されていることを求めています。これにより、川崎市の基準に沿った管理計画を持つマンションが優先的に認定されます。
認定計画の変更
認定を受けた管理計画を変更する場合、軽微な変更を除いて、変更の認定申請が必要です。軽微な変更とは、マンションの管理に関する法律施行規則で定められた範囲のものです。変更申請は、川崎市の担当窓口に直接行う必要があります。
川崎市のマンション管理支援について
全国的にマンションの経年劣化が進む中、適切な管理や修繕が行われないと、外壁の剥落などで近隣住民に被害を与える可能性があります。この問題を受け、令和2年6月に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が改正されました。この法律の改正により、マンションの管理をより適切に行うことが強く求められるようになりました。
川崎市マンション管理適正化推進計画
川崎市でも、今後マンションの経年劣化が進むことが予想されています。そのため、令和5年3月に「川崎市マンション管理適正化推進計画」が策定されました。この計画は、市内のマンションの管理が計画的に進むよう、管理組合が適切な管理と修繕を行うためのガイドラインや支援を提供しています。この計画に基づき、川崎市はマンションの管理の向上を目指しています。
川崎市マンション管理計画認定制度
この制度は、適切に管理されているマンションが認定を受けることで、市場価値が向上するというものです。認定を受けたマンションは、管理組合の意識が高まり、管理水準を維持・向上させることが期待されています。この認定は、マンションの維持管理の質を高めるための重要な一歩です。
マンション長寿命化促進税制
令和5年度の税制改正により、マンションの長寿命化を促進するための新しい税制が導入されました。この制度では、管理計画認定を受けたマンションが、大規模修繕工事を行った場合、翌年度の建物部分にかかる固定資産税が減額されることが決まりました。この減額措置は、管理組合が必要な積立金を確保し、適切な大規模修繕工事を実施することを促す目的で設けられています。
マンションの大規模修繕による固定資産税の減額によくある質問
マンションの大規模修繕を行った際に、固定資産税の減額が受けられることは多くのマンション所有者にとって魅力的な制度です。
ここでは、よくある質問に対して、国土交通省の資料を参考にわかりやすく解説していきます。
賃貸マンションは対象となりますか?
税制の適用対象は、マンションが分譲か賃貸かに関わらず、区分所有者が存在するマンションと定められています。
具体的には、分譲マンションで各住戸が異なる所有者に分かれている場合、所有者がその住戸を貸し出していても、税制の対象となります。一方で、1人の所有者が1棟全体を所有している賃貸マンションの場合は、この税制の対象外です。つまり、複数の所有者が存在し、それぞれの所有者が賃貸している場合は対象となるため、区分所有の分譲マンションであれば、賃貸に出していても減額の適用を受けることができます。
要するに、マンション全体が1人の所有者による賃貸物件は対象外ですが、分譲マンションであれば賃貸していても適用対象になります。
他の固定資産税の減税措置と併用できるのでしょうか?
マンションの大規模修繕による固定資産税の減額を受ける制度ですが、他のリフォームに対する固定資産税の減税措置との併用はできません。
例えば、以下のリフォームによる減税措置と同じ年に併用することはできません:
- 耐震リフォーム
- バリアフリーリフォーム
- 省エネリフォーム
- 長期優良住宅化リフォーム
つまり、これらのリフォームによって固定資産税の減額を受けている場合、同じ年にマンション長寿命化促進税制による減額を同時に適用することはできません。
まとめ~川崎市のマンション・アパートの大規模修繕なら
今回の記事では、マンションの大規模修繕による固定資産税の減額制度について詳しく解説しました。
この制度は、マンションの価値を維持し、長寿命化を図るために行われる修繕工事に対して、固定資産税の負担を軽減するものです。特に、屋根防水工事や外壁塗装などの長寿命化工事が対象となり、適切な申請手続きを行うことで減額が適用されます。
マンションの所有者や管理組合にとって、この税制を正しく理解し、適切な手続きを行うことで、経済的なメリットを最大限に活用できるでしょう。大規模修繕を検討している方は、税制優遇の条件を確認し、計画的に進めることをおすすめします。
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