マンションの大規模修繕は、建物の資産価値を維持し、快適な住環境を保つために欠かせないものです。しかし、修繕にかかる費用がいくらになるのか、適正な価格はいくらなのか、不安を感じる管理組合の方も多いのではないでしょうか。
特に、「戸当たり単価」は、総工事費を各戸で均等に割った指標として使われるため、マンションの管理組合にとって重要な判断材料になります。しかし、適正な相場を知らないと、「見積もり金額が高すぎるのでは?」「この業者の提案は妥当なのか?」といった疑問が生じることもあるでしょう。
本記事では、国土交通省の『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省)』のデータをもとに、マンション大規模修繕の「戸当たり単価」の相場や、費用が変動する要因、コストを抑えるためのポイントを詳しく解説します。
参考:『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省)』
マンション大規模修繕の戸当たり単価とは?
マンションの大規模修繕にかかる費用は、マンションの規模や工事内容によって大きく変わります。 そのため、管理組合としては「適正な修繕費用とはどの程度なのか?」を把握しておくことが重要です。
修繕費用を考える際に指標となるのが「戸当たり単価」です。これは、総工事費を総戸数で割った金額であり、各住戸ごとに負担する修繕費の目安になります。
国土交通省の『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省)』によると、マンションの戸当たり単価には一定の傾向が見られます。
戸当たり単価の基本的な考え方
「戸当たり単価」とは、マンションの大規模修繕にかかる総工事費を総戸数で割った金額のことを指します。 例えば、総工事費が1億円で、100戸のマンションの場合、戸当たり単価は100万円/戸となります。
この指標は、管理組合が修繕費用の適正性を判断する際に役立つ基準となります。しかし、戸当たり単価だけでは、マンションごとの状況に応じた適正な費用かどうかを判断するのは難しいため、床面積あたりの単価(㎡あたり単価) も考慮する必要があります。
マンション大規模修繕の平均的な戸当たり単価
マンションの大規模修繕における戸当たり単価の相場はどのくらいなのでしょうか?
国土交通省の『令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査(国土交通省)』によると、最も多い価格帯は「100〜125万円/戸」であることがわかっています。2番目に多いのは「75〜100万円/戸」、3番目は「125〜150万円/戸」となっています。
また、床面積あたりの工事金額を見てみると、最も多いのは「1.0〜1.5万円/㎡」、次いで 「0.5〜1.0万円/㎡」、「1.5~2.0万円/㎡」であることがわかります。
さらに、工事回数ごとの修繕費用の分布は、1回目の大規模修繕では「4,000~6,000万円」が最多、2回目の大規模修繕で「6,000~8,000万円」、3回目以上の大規模修繕においては「6,000~8,000万円」「10,000~15,000万円」が多くなっています。
修繕の回数が増えるごとに、工事費用が高くなる傾向があることがわかります。これは、建物の老朽化が進むにつれて、より大規模な修繕が必要になるためです。
マンションごとの状況によって戸当たり単価は異なりますが、上記のデータを基準にしながら、自分のマンションの修繕計画が適正な価格であるかどうかを判断することが大切です。
マンションの規模・築年数による影響
マンションの規模や築年数によって、大規模修繕にかかる費用は大きく異なります。特に、総戸数が少ない小規模マンションでは、1戸あたりの修繕費用が高くなる傾向があります。
国土交通省の調査では、「20戸以下」「21〜30戸以下」のマンションについて、修繕費用の分布が示されています。
■20戸以下のマンションの修繕費用
- 1回目・2回目:「2,000万円以下」と「2,000~4,000万円以下」が同数
- 3回目以上:「2,000万円以下」が100%
※ 回数を重ねても、修繕費用は比較的低い傾向にある
■21~30戸のマンションの修繕費用
1回目の修繕
- 「2,000~4,000万円以下」:68.4%
- 「4,000~6,000万円以下」:31.6%
2回目の修繕
- 「2,000~4,000万円以下」:91.7%
- 「2,000万円以下」:8.3%
3回目の修繕
- 「2,000~4,000万円以下」:58.3%
- 「2,000万円以下」:25.0%
※ 2回目の修繕時には、「2,000~4,000万円以下」の割合が最も高くなる傾向にある
データを見てみると、マンションの規模が大きくなると、1戸あたりの修繕費は低くなる傾向がわかります。これは、工事費用の総額が増えても、総戸数が多いために負担が分散されるためです。
また、大規模マンションでは、施工業者との交渉力が高まり、修繕単価を抑えやすくなるというメリットもあります。
自分のマンションの規模や築年数を考慮しながら、適正な修繕費用を見極めることが大切です。
大規模修繕の費用を削減するポイント
マンションの大規模修繕は高額な費用がかかるため、管理組合としてはできるだけコストを抑えたいと考えるのは当然です。しかし、単に費用を削減しようとすると、必要な工事を省いてしまい、結果的にマンションの資産価値を下げてしまう可能性もあります。
そのため、適正なコストで質の高い修繕を行うことが重要です。
相見積もりを取ることの重要性
マンションの大規模修繕では、施工業者によって見積もり金額に大きな差が生じることがあります。そのため、必ず複数の業者から見積もりを取り、価格や工事内容を比較することが重要です。
①適正価格がわかる
1社だけの見積もりでは、その金額が相場と比べて高いのか安いのか判断がつきません。しかし、3社以上の業者から見積もりを取ることで、市場価格が明確になり、不当に高額な見積もりを回避できるようになります。
②不要な工事を削減できる
同じ修繕工事でも、業者によって提案内容が異なります。相見積もりを取ることで、必要な工事と不要な工事を見極めることが可能になります。
③工事の質を比較できる
見積もりの金額だけでなく、工事内容の質にも差があります。特に、以下のようなポイントは要チェックです。
- 使用する材料のグレード(安価な塗料 vs 高耐久の塗料)
- 足場の設置方法(安全性を考慮した設置かどうか)
- 保証期間の違い(施工後のアフターサービスの有無)
施工実績や口コミを確認し、価格と品質のバランスが取れた業者を選ぶことが重要です。
不要な工事項目を削減する
大規模修繕では、施工業者の提案する工事内容をそのまま受け入れるのではなく、本当に必要な工事かどうかを見極めることが重要です。不要な工事を削減することで、コストを抑えながら、必要な部分には適切に予算を配分できます。
①すべての工事が本当に必要かを見極める
見積もりを受け取ったら、工事の内容をひとつずつチェックしましょう。特に、築年数が浅いマンションでは、まだ十分に使用できる設備まで交換や修繕の対象になっていないか注意が必要です。
②「ついで工事」の提案に注意する
施工業者によっては、「せっかく足場を組むので、他の部分も一緒に修繕しませんか?」と追加工事を提案してくることがあります。一見すると合理的に思えますが、不要な工事を追加されることで、費用がかさむ原因になることもあります。
③長期修繕計画を見直して判断する
不要な工事を削減するためには、マンション全体の長期修繕計画を見直すことも大切です。次回の修繕工事で実施予定の工事項目を確認し、今回実施すべき工事と、次回に回しても問題ない工事を整理しましょう。
また、住民合意の形成にも長期修繕計画のデータが役立ちます。「この工事は次回の修繕で実施予定なので、今回は見送る」と説明できれば、住民の理解も得やすくなります。
補助金・助成金を活用する
マンションの大規模修繕には高額な費用がかかりますが、国や自治体の補助金・助成金を活用することで、費用負担を軽減できる可能性があります。 しかし、補助金制度は地域によって異なり、申請手続きが複雑な場合もあるため、早めに情報収集し、活用できる制度を確認することが大切です。
マンションの大規模修繕に関連する補助金・助成金には、「耐震改修補助金」「バリアフリー改修補助金」「省エネ改修補助金」「外壁修繕補助金」などがあります。ただ、補助金の種類や適用条件は自治体によって異なるため、まずは居住している自治体のホームページや窓口で確認することが重要です。
また、補助金の対象となる工事範囲は限定されていることが多いため、マンション全体の修繕計画と照らし合わせながら活用を検討することが大切です。
マンション管理組合が知っておくべき注意点
大規模修繕は、マンションの資産価値を維持するために不可欠な工事ですが、修繕積立金の不足や施工業者選びの失敗、住民間の合意形成の難しさなど、多くの課題を抱えることがあります。 これらの問題を事前に把握し、適切な対策を講じることで、スムーズに修繕を進めることが可能になります。
修繕積立金が不足している場合の対策
マンションの大規模修繕を進めるうえで、修繕積立金が不足しているという問題は多くの管理組合が直面する課題です。修繕積立金の不足を補う方法はいくつかありますが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、慎重に検討する必要があります。
修繕積立金が不足している場合、最も直接的な対策は「一時金」を住民から徴収することです。一時金の徴収は、短期間で資金を確保できるメリットがありますが、住民の負担が一時的に大きくなるため、合意形成が難しいことがデメリットです。
一時金の徴収が難しい場合、月々の修繕積立金を増額する方法もあります。この方法では、住民の負担を分散できるため、一時金よりも受け入れられやすい傾向にあります。ただし、短期間での資金確保には向いていません。
それでもどうしても資金が不足する場合は、金融機関からの借り入れを検討するという方法もあります。一部の金融機関では、マンション管理組合向けの融資制度が用意されており、修繕工事に必要な資金を分割で返済することが可能です。
施工業者選定で失敗しないためのポイント
大規模修繕の成功は、適切な施工業者を選ぶことにかかっています。しかし、業者選びに失敗すると、高額な費用がかかったり、施工の品質が低くなったりするリスクがあります。
①業者の実績と評判を確認する
大規模修繕は専門的な知識と経験が求められる工事です。過去にどのような実績があるのかを確認することが重要です。
②見積もりの内容を細かく比較する
施工業者によって、見積もりの金額や工事項目が異なるため、詳細な比較が必要です。安すぎる見積もりは要注意です。
③契約前にアフターサポートを確認する
大規模修繕は、工事が終わった後の保証やアフターサポートも重要です。施工後に不具合が発生した場合、適切な対応をしてもらえるかどうかを事前に確認しておきましょう。
住民合意をスムーズに進める方法
マンションの大規模修繕は、住民の合意を得ることが大きな課題のひとつです。修繕内容や費用負担に対して意見が分かれることが多く、合意形成に時間がかかるケースも少なくありません。
①住民説明会を定期的に開催する
住民が修繕工事に納得するためには、計画の詳細を事前にしっかり説明することが重要です。特に、修繕積立金が不足している場合など、住民に負担が発生するケースでは丁寧な説明が不可欠です。
②住民アンケートを活用する
説明会だけでは意見を十分に把握できない場合、事前にアンケートを実施するのも有効です。住民の意向を把握し、それに基づいて修繕計画を調整することで、合意形成をスムーズに進めることができます。
③管理会社や専門家の協力を得る
管理組合だけで住民合意を進めるのは難しいため、管理会社やコンサルタント、施工業者などの専門家の力を借りることも大切です。修繕内容や資金計画について意見が分かれる場合、専門家の助言があると合意形成がスムーズになることが多いです。
まとめ~川崎市のマンションの大規模修繕なら
本記事では、マンション大規模修繕の戸当たり単価の相場や、費用を抑えるためのポイント、管理組合が注意すべき点について詳しく解説しました。
大規模修繕の戸当たり単価は、国土交通省の調査によると「100〜125万円/戸」が最も多いというデータがあります。
しかし、修繕費用はマンションの規模や工事内容、施工業者の選び方によって大きく変動します。適正な価格で修繕を行うためには、相見積もりの活用や不要な工事項目の削減、補助金・助成金の活用などが重要です。
また、修繕積立金が不足している場合は、一時金の徴収や積立金の増額、コスト削減などの対策を検討する必要があります。さらに、施工業者の選定や住民合意の形成も、大規模修繕を円滑に進めるための重要なポイントです。
適正な費用で質の高い修繕を実現し、マンションの資産価値を守るためにも、計画的な準備を進めましょう。
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